国の責任明確に メーカーは指針示さず 建設石綿訴訟

最高裁での判決を受け、「勝訴、救済」の文字を掲げる原告団ら=17日午後、東京都千代田区(松井英幸撮影)
最高裁での判決を受け、「勝訴、救済」の文字を掲げる原告団ら=17日午後、東京都千代田区(松井英幸撮影)

「建設アスベスト訴訟」をめぐる17日の最高裁判決は、国の責任の対象と範囲を明確に示した。アスベスト(石綿)による健康被害に苦しんだ労働者らに救済の道を開く一方、建材メーカーの責任については今回の判決で詳細な指針は示されず、当事者は引き続き、個々の訴訟で主張を交わす必要がありそうだ。

石綿の健康被害をめぐっては、大阪の石綿製造工場の元労働者が起こした「泉南アスベスト訴訟」で、排気装置の設置を義務付けなかったことなどを違法として国の敗訴が確定。今回の訴訟で、国は「建設現場で飛散した粉塵(ふんじん)は、石綿工場内とは大きく違う」として強く責任を否定していた。

これに対し第1小法廷は、国は、法律で石綿の表示を義務付けた昭和50年には労働者の石綿関連疾患を防ぐ必要があると認識していたと指摘。重篤な疾患を発症する危険性や防塵マスクの必要性を示すよう指導監督する通達を出すべきだったなどと認定した。

一方、石綿建材が原則使用禁止になるなどした平成16年以降は、違法状態が解消されたとした。

また国は、個人事業主や零細企業の事業主は「経営者」に当たるため、労働者の安全や衛生の基準を定めた労働安全衛生法上の救済対象ではなく、自ら安全を確保する立場にあったとして責任を否定してきたが、第1小法廷は、安衛法の趣旨や労働実態に基づき、救済対象とした。屋外作業者については、危険性を国が予見することはできなかったと判断、国は責任を負わないと結論付けた。

メーカーをめぐっては、一部の高裁判決で、労働者らが現場でどの社の建材を扱ったかを立証できないとして原告側の請求を棄却していたが、第1小法廷は高裁で検討された立証方法などから、どれを扱ったか推認することは可能と判断。改めて審理を尽くすよう高裁に審理を差し戻した。

一連の上告審では、京都や大阪の各訴訟で販売シェアなど複数の証拠を基にメーカーに賠償を命じる判断が確定。最高裁関係者は「企業の責任を問うにはさまざまな証拠の検討が必要。国と違い個別に丁寧な検討が必要と判断したことがうかがえる」と述べた。(加藤園子)

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