巨木が立ち並ぶ参道に朝日が差し込むと、荘厳さが一層際立つ。早朝の澄んだ空気に包まれ、参道はいまにも祭神が通るかのように見えた。
創建から2千年余りに及ぶ歴史を持つ戸隠(とがくし)神社(長野市)。奥社、中社、宝光社など5つに分かれており、奥社参道には樹齢350年を超えるスギ約200本が約500メートルにわたって続いている。
戸隠神社は今月25日まで、6年に1度の式年大祭の神事が行われている。今回の大祭のテーマは「清明(さやけ)」。水野邦樹宮司(64)は「新型コロナが収束し、明るく清らかな世界になりますようにと願いを込めた」と話す。
9日の「渡御(とぎょ)の儀」では、例年500人以上が行列を作るが、今年は150人ほどに縮小し、宝光社のご神体を中社に移した。15日には宝光社、中社のご神体を載せたみこしを、杉並木を通って奥社に運んだ。
地元住民でつくる「戸隠奥社の杜(もり)と杉並木を守る会」事務局の林部直樹さん(52)によると、10年ほど前にCMのロケ地になったことから人気に火が付き、観光客が増えたという。「多くの観光客が参道を通ることで根が傷み、倒れやすい状態になっている木がある」。杉並木の生育不良につながると懸念する声も出ており、守る会などが保存活用の計画作りを進めている。
「杜を見つめながら、木が元気な状態を維持できるように寄り添っていきたい」と林部さん。江戸時代初期から参道の整備が始まり、人と自然が育んできた杉並木。神秘的な光景が、これからも参拝者を出迎える。 (写真報道局 佐藤徳昭)