主権者教育の推進策を検討していた文部科学省の有識者会議は、小中学校段階から主権者としての意識を育むことが重要とする報告書をまとめた。児童会・生徒会の活動を充実させ、NIE(教育に新聞を)の積極的な活用を求めた。
平成28年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、来年4月には成人年齢も18歳となる。
高校3年で「大人」の仲間入りをすることから、政治参加や社会問題への関心を育成する教育の重要性が高まっている。来年度からの高校の新学習指導要領では、主権者教育に力点を置く新科目「公共」が必修となる。
ただ、10代の投票率は国政選挙を重ねるごとに低下傾向にある。
報告書はこうした点を踏まえ「主権者教育の『入り口』は幼少期から社会の動きに関心を持つことにある」と指摘。親子での投票や議会見学などを促し、学校だけでなく家庭でもNIEを推進するべきだとした。
文科省(当時は文部省)は学生運動が激しかった昭和44年、学校教育で具体的な政治課題は慎重に扱うよう通知したが、18歳選挙権を受けた平成27年10月の新たな通知では、政治的中立性を確保しつつ、現実の問題での実践的な教育を求めた。
報告書は「主権者教育で扱う社会的、政治的な課題に唯一絶対の正解がある訳ではなく、合意形成を図っていく過程が重要」と強調した。
有識者会議は今年3月末に報告書をまとめた。座長を務めた政治解説者の篠原文也氏は「家庭での取り組みが鍵となる。親子で政治や社会の問題を話し合う機会を設けてほしい」と話した。