プレビュー

激動のドイツ史「ハイゼ家 百年」ほか3本

公開中~公開間近の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。劇場公開作品のほか、配信作品も紹介します。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、映画館での上映予定は変更される場合があります。最新の上映予定は、各映画館にお問い合わせください。


「ハイゼ家 百年」

本作は旧東ドイツ出身の映画監督、トーマス・ハイゼ(65)の祖父の代から3代にわたる家族の物語だ。そしてヒトラーによるナチ独裁体制やユダヤ人迫害、第二次大戦勃発、冷戦による東西分断、シュタージ(秘密警察)による監視社会、「ベルリンの壁」崩壊と再統一という激動のドイツ百年史でもある。

ハイゼ家が19世紀後半から保管してきた手紙や日記類を、監督自ら抑揚を一切排した声で読み上げる。こうしたモノローグで全編が描かれたドキュメンタリー作品で、観客はまるで歴史の証人台に立たされた気分になる。

特に祖父、ヴィルヘルムの代を振り返る第1章(1910年代~40年代)は重苦しい。ユダヤ人のエディトとの結婚は当時、〝禁忌の混血婚〟とされた。

エディトの親族らからの手紙には、ユダヤ人が東方に移送されていく様子が生々しくつづられている。画面には移送者の名簿が延々と続き、不条理に殺された人々が、無言で訴えてくるようだ。独・オーストリア合作。

東京・シアター・イメージフォーラムで公開中。3時間38分。(啓)

映画「くれなずめ」(C)2020「くれなずめ」製作委員会
映画「くれなずめ」(C)2020「くれなずめ」製作委員会

「くれなずめ」

ある後悔が心に残り続けている6人の青年が主人公。彼らの暮れそうで暮れない、いわば「暮れなずむ青春」を、笑いと涙といささかシュールな表現とで描く。

高校時代の友人6人を演じるのは、NHKの朝ドラや大河ドラマでも活躍する成田凌(なりた・りょう)、高良健吾(こうら・けんご)、若葉竜也(わかば・りゅうや)ら30代の実力派たち。監督は、「バイプレイヤーズ~もしも100人の脇役が映画を作ったら」でも達者な群像劇を展開した松居大悟(まつい・だいご)。

原作は松居による舞台演劇。なるほど、現在と過去が交差しながらやがて明かされる〝仕掛け〟は演劇的な奇抜さだが、切なさを感じずにいられないのは、誰もが一つくらいは青春の後悔を胸に抱えたままだからか。

14日から東京・新宿テアトルなどで公開。1時間36分。(健)

映画「海辺の家族たち」の一場面(C) AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016
映画「海辺の家族たち」の一場面(C) AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016

「海辺の家族たち」

仏マルセイユ近郊の風光明媚(めいび)な海辺の家に、パリ在住の人気女優、アンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)が父との最期の日々を過ごすため、20年ぶりに故郷に帰ってくる。

兄2人が迎えてくれるが、アンジェルは家族との間に断ち切れないわだかまりを抱いていた。そんな中、漂着した難民の子供たちとの出会いが希望へと変わっていく。人と人とがつながることの大切さが伝わってくる。

第74回ベネチア国際映画祭コンペ部門に出品された。仏映画。監督は同国の名匠、ロベール・ゲディギャン(67)。14日から東京・キノシネマ立川髙島屋S.C.館などで全国順次公開。1時間47分。(啓)

Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中
Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中

「マ・レイニーのブラックボトム」(Netflixオリジナル映画)

1920年代の米シカゴを舞台に、「ブルースの母」と称される実在の歌手、マ・レイニー(ビオラ・デイビス)と野心あふれるトランペット奏者のレヴィー(チャドウィック・ボーズマン)らバンドメンバーたちを描く。Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画。

歯に衣(きぬ)着せぬマ・レイニーは、白人のプロデューサーたちと主導権をめぐり激しく対立し、録音スタジオは緊迫した雰囲気に包まれるが…。監督は、米国の劇作家として知られるジョージ・C・ウルフ。

米アカデミー賞では主演男優/女優賞など計5部門でノミネートされ、うち衣装デザイン賞、メーキャップ&ヘアスタイリング賞の2部門を受賞した。Netflixで独占配信中。1時間34分。(啓)

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