建設現場で建材に含まれるアスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などを発症したとして、元労働者や遺族らが国や建材メーカーに損害賠償を求めた「建設アスベスト訴訟」の判決が17日、最高裁第1小法廷で言い渡される。下級審では、被告に課される賠償責任の範囲や程度に対する判断にばらつきがあり、初の統一判断が示される見通し。国の補償をめぐる議論にも影響しそうだ。(加藤園子)
丈夫で軽く「奇跡の鉱物」と重宝されたアスベスト。高度成長期に建材などで多用されたが、後に健康被害が顕在化。国内では平成18年に製造・使用が全面禁止されたが、潜伏期間が長いことから「静かな時限爆弾」とも呼ばれ、今も健康被害の訴えが絶えない。
今回の判決の主な焦点は「一人親方」と呼ばれる個人事業主も救済対象に含まれるか否か▽メーカーの責任を問えるか否か-の2点だ。
一人親方は、長く救済の対象外とされてきた。第1小法廷で結審した横浜、東京、京都、大阪の各地裁に起こされた4訴訟のうち、横浜訴訟の2審判決でも、労働安全衛生法などが保護対象とする「労働者」に当たらないとして、国に賠償責任はないとの判断が出された。
だが第1小法廷は、一人親方の論点について、横浜訴訟の弁論を開いており、国の責任を否定した結論を見直す可能性が高い。弁護団によると、石綿が流通していた当時の一人親方は建設従事者の15%程度を占めており、救済されればその意義は大きい。
一方、メーカーの責任をめぐっては労働者が複数の現場を渡り歩くことからどの建材が被害原因になったかを証明するのが困難で、原告敗訴が続いていた。
だが、京都訴訟などの高裁判決は、一定以上の販売シェアがあったメーカーに連帯責任を負わすべきだと主張した原告側の主張に基づき、複数社の責任を認定。後続の判決でも、メーカーのシェアを考慮した賠償命令が続いている。