朝晴れエッセー

ママさんとスミさん・5月13日

2年前の春、私の最愛のママさん(祖母)は旅立ちました。最期はもう言葉を発することさえできず、自責の念に駆られる毎日でした。

祖母が旅立ってから2カ月ほどたった夏のある日、部活帰りの最寄り駅で、私は1人の迷子のご婦人と出会いました。

声を掛けると、「この、近くの○○病院に行きたいのだけれど…」と病院の紹介状を渡されました。その病院は駅から私の家までの通り道沿いにあったので、病院まで送ることにしました。

ご婦人はスミさんというお名前で、10駅もむこうの場所からはるばる来たとのこと。病院までの道を歩きながら「今日診察や手術をお受けになるのですか?」と尋ねると、「いいえ、今日は来週の水曜日の診察に行く練習なの」と言います。

「れ、練習ですか!」と思わず口にすると、スミさんは笑いました。

無事病院にたどり着いて中を見学したのち、駅までまた送ることになり、ふと、スミさんの匂いに不思議な感覚を覚えました。

なんだっけな、この匂い…。ふわふわした、やさしい匂い。しばらく考えて思い出したのは、ママさんの匂いです。

駅に戻ってお別れをした後に歩きながら、もしかしたら、空にいるママさんがスミさんと私を出会わせてくれたのかもしれないと思うと、心の中があたたかくなり、涙がこぼれました。

帰ってすぐにママさんの仏壇にそのことをお話ししました。心なしかいつもより写真のママさんの笑顔がまぶしい気がしました。スミさん、ママさん、ありがとう。


松本理佳 17 東京都新宿区