4月の訪米直前、菅義偉(すが・よしひで)首相は日朝国交正常化推進議員連盟との面談で、北朝鮮による日本人拉致問題について「日朝平壌宣言を原点としてしっかり取り組む」と語った。1月の施政方針演説でも「宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決」すると述べている。
はたして平壌宣言とは何かといえば、2002年9月に小泉純一郎首相(当時)が訪朝して金正日国防委員長(同)との間で署名したものだが、拉致問題の全面解決に向けた方策は明記されなかった。1998年の弾道ミサイル「テポドン」発射などを受け、北朝鮮が「この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアム(停止)を2003年以降もさらに延長していく」と約束した点も、その後のミサイル発射実験や核実験の強行によってほごにされた。
一方で、無償資金協力や低利の長期借款供与など日本側からの経済協力については、国交正常化交渉の中で具体化させていくことが書かれている。