新型コロナウイルス感染拡大の第3波で、療養者が増え医療崩壊も現実味を帯びていた。政府は1月13日に緊急事態宣言の対象地域を拡大。欧米ではワクチン接種が着々と進む中、菅義偉首相は2月下旬までに接種を始めると表明し、ワクチン担当相に河野太郎氏を任命。ようやく接種体制の準備が緒に就いた。
鉄道各社が終電繰り上げ/バイデン氏が第46代米大統領に就任「コロナをめぐる動き」グラフィックを見る
国内では都市部で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、累計感染者数は1月13日に30万人を超え、わずか3週間あまりで10万人も増加した。政府は同日、緊急事態宣言の対象地域を拡大し、7日に宣言した首都圏4都県に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加。大阪府の吉村洋文知事は13日の記者会見で「このままでは医療崩壊を起こしてしまう」と危機感をあらわにした。
「通常であれば受けられる医療を受けられない事態が生じ始めている」。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織は13日、保健所や医療機関の職員が相当疲弊しているとして、このような分析結果をまとめた。入院治療などが必要な感染者は1日時点で3万7187人だったが、11日に6万1449人となり、10日間で約2万4000人増えた。一方で、病床の確保は進まず、昨年末から2万7000床台で推移。13日時点で、東京と福岡の病床は8割以上が埋まり、埼玉、滋賀、大阪、兵庫、広島は7割以上となった。入院先が見つからずに自宅待機中の患者が死亡する事例も各地で相次いだ。
日本経済は長期低迷から抜け出せず、安倍晋三前政権で進んだ賃金改善にもブレーキがかかった。経団連は19日、令和3年春闘で経営側の方針を発表。新型コロナ感染が新常態となる中で迎えた春闘は初めてで、大橋徹二副会長(コマツ会長)は会見で、「事業の存続と雇用維持が重要」とし、一律の賃上げ方針打ち出しは難しいとの考えを示した。
変異株、ワクチン急ぐ英国
変異株が猛威を振るった英国はワクチン接種を急いでおり、ともに90歳を超えるエリザベス女王と夫のフィリップ殿下が9日に接種を受けた。
米国で第46代大統領に選ばれたバイデン氏は20日の就任式で、「この冬を抜けるためにすべての力と忍耐が必要だ」と呼び掛けた。同氏は就任当初100日を集中的な対処期間とし、「1億回分のワクチン接種」を目標に掲げるとともに、マスク着用などの感染症対策を国民に訴え、世界最悪に陥っていたコロナ禍の封じ込めを目指した。
ウイルスの起源解明を目指す世界保健機関(WHO)の国際調査団が14日、最初に感染が広がった中国湖北省武漢市に入った。中国は調査団の受け入れすら当初消極的で、WHOの独立委員会は18日、新型コロナ対応に関する中間報告で「中国の保健当局は(感染拡大初期の)昨年1月の段階で、より強力な公衆衛生上の措置を取れたはずだ」と批判した。
ビジネス往来、一時停止
このころ、英国由来の変異株の国内での市中感染が始まっていた。英国や南アフリカで報告されているものとは異なる新しいタイプの変異株も、ブラジルから到着した渡航者から確認されていた。
菅義偉(すが・よしひで)首相は13日の記者会見で、中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス往来を一時停止すると表明した。国民に移動自粛などを求める中で国外からの来訪を容認していたため、水際対策の強化として自民党がビジネス往来の停止を強く求めていた。首相は「日中も(外出を)控えてほしい」とも強調したが、7日の会見では午後8時以降の外出自粛を力説しており、情報発信の不十分さも浮き彫りになった。
「一日も早く収束させる」。首相は、就任後初めてとなった18日の施政方針演説でこう強調。営業時間の短縮要請に応じない飲食店への罰則を盛り込んだ新型コロナ特別措置法改正案を今国会に提出すると表明した。さらにこの日、コロナ収束の「切り札」と位置付けるワクチン接種の担当閣僚に河野太郎規制改革担当相を任命した。ツイッターなどでの発信力を期待しての人事で、首相は接種を2月下旬までに開始するとも表明。20日には厚労省が米製薬大手ファイザー製のワクチンについて年内に計7200万人分(1億4400万回分)の供給を受けることで正式に契約したと発表した。
(29)2021年1月22日~ 罰則めぐり迷走 議員会食相次ぐ