朝晴れエッセー

母の似顔絵・5月9日

スーパーに買い物に行ったら「お母さんのにがおえをかきませんか?」と用紙が置いてあった。母の日にちなんだ子供向けのサービスだ。今年に限ってなぜか手が伸び、1枚もらって帰った。

さて、いざ紙に向かうと困ってしまった。どう描こうか。

最後に見たのは6年前、棺に納まった顔だ。80歳の母の顔は、濃くアイシャドーが塗られ別人のようだった。

葬儀社の人の質問に答えて化粧してもらったらあんなことになってしまった。「何か違うがね」と思いながら訂正する気力もなく、そのまま納棺となったのだ。

その顔を思い出しおかしくなり、普段の写真を見てみた。認知症がかなり進んだ頃の母。童女のようにあどけなくほほ笑み、とてもかわいい。

そういえば冗談を言うのが大好きだったなあ。姉妹で真剣に母の介護の相談をしているときに、素っ頓狂なことを言ってふざけることもあった。

どうしてあのとき母を怒ったのだろう。一緒に笑ってあげたら良かったのに。

今思えば気持ちに余裕がなかったんだと理解できるが、悔やまれる。怒られてシュンとした母の顔が今でも目に浮かぶ。

根は陽気で笑うことが大好きな元気な母だった。そうだ、やっぱり笑顔だな。笑っている母がいい。天国でも冗談を言って笑っているだろうから。そうでいてほしいから笑顔の母を描こう。かわいくて美人に見えるように。

最後の化粧のようにかなり「盛った」絵になってしまった。「お母さん、どげんね?」


北本百合子(60) 東京都町田市