治安最前線

(4)東京2020交通総合対策室 「円滑交通」の難題に挑む

東京大会での競技会場周辺の交通規制を取り仕切る原中慎也警視=4月30日、東京都中央区晴海(吉沢智美撮影)
東京大会での競技会場周辺の交通規制を取り仕切る原中慎也警視=4月30日、東京都中央区晴海(吉沢智美撮影)

世界屈指の大都市・東京で開かれる今回の五輪・パラリンピック。首都高などの都市機能の維持と、選手や関係者らの円滑な移動ルートの確保との両立は、交通規制を担う警視庁にとって最大の課題の一つでもある。

その「難題」に奮闘するのが、東京2020交通総合対策室だ。中央区晴海のプレハブ庁舎で、約80人の警察官や職員らが、都内24カ所の競技会場や、都内215・8キロの高速道路と、周辺の76・4キロの一般道に及ぶ大会ルートを記した図面などを広げ、計画に「穴」がないかを確認している。

都などの試算では、何も対策を行わずに大会へ突入した場合、首都高を中心にした高速道の渋滞の長さは今の2倍近くに達する。「交通は生き物。さまざまな計算の下、交通規制を行うが、何が起きるか分からない。とはいえ、何としても成功にこぎつける」。会場周辺の交通規制を取り仕切る原中慎也警視(58)は大舞台への意気込みを語る。

前回五輪と環境激変

1964(昭和39)年の前回の東京五輪の開幕に合わせ、整備された首都高は今回も大会関係者らの輸送の主役を担う。当然本部では前回大会の資料を集め、古びた紙をめくりながらヒントを探った。白黒の記録映像も確認し、交通規制の範囲や規模感も参考にしたという。

ただ、交通環境は約60年の時を経て、目覚ましく発展した。原中さんは「『また首都高が活躍するのか』と感慨を抱くが、当時とあまりにも環境が違い、ほぼ一から交通規制を考えなければならなかった」と明かす。

加えて、五輪は原中さんがこれまで経験してきた東京マラソンなどの競技大会とは違い、競技会場や関係施設も多い。「それぞれの会場ごとに交通規制をかけねばならず、難しい」

「円滑に流したい」

このため、「現場第一主義」を掲げる原中さんは休日を利用するなどし、何度も現場に足を運んで、その目で交通環境の調査を続けてきた。都内8市にまたがる自転車競技(ロードレース)のルートは、隅々を覚えるまで何度も周回したという。「同じ曜日や時間帯に自分の足で確認しないと、交通環境は分からない」と力を込める。

五輪・パラは新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で1年の延期を強いられ、聖火リレーもなかなかルートは決まらなかった。競技会場の変更もあり、考えぬいた交通規制が練り直しを強いられたこともあったという。

だが、原中さんらは淡々と最善の計画を練り、開幕に備えてきた。都市機能を維持させながら、大会関係車両も円滑に走らせる…。

「交通規制は最小限に、渋滞が発生しないように円滑に流したい」

求められた「成果」が試されるのは、もうすぐだ。(吉沢智美)

東京五輪・パラリンピックの大会関係者を輸送する「関係者輸送ルート」には、宿泊施設や空港、競技会場などを結び選手らが移動する「大会ルート」などがある。

東京圏の一般道には、大会ルート上などで関係車両しか通行できない「専用レーン」や、関係車両が通る際は道を譲らなければならない「優先レーン」が設定されている。

ほかにも、交通を制限する通行規制エリア、回り道を促す迂回(うかい)エリアなどがあり、交通規制の詳細情報は、東京大会の公式サイトなどで確認できる。


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