ソウルからヨボセヨ

不正と腐敗の構造

韓国の証券市場には「政治テーマ株」とか「大選テーマ株」といった言葉がある。政治情勢や大統領選挙に関連する株という意味だが、大統領選を1年後に控えまたぞろそんな言葉が話題になっている。与野党の大統領候補と関係があるとみられる企業の株に投資家の関心が集まり、株価が上下しているというのだ。

問題は大統領候補との〝関係〟だがこれが実に興味深い。韓国はよく「組織より人脈で動く社会」といわれ、その最も強力な人脈が血縁・地縁・学縁である。そこで証券市場では次期大統領候補たちとそうした〝縁〟のある人物を経営陣に抱える企業が注目される。

血縁でははるかな遠縁も含む。地縁だと同郷、学縁では同級でなくても同じ学校出身でいい。次の大統領とそうした縁がある企業には、きっといいことがあるに違いないという期待感から株価が上がる。つまり大統領(権力)と縁(人脈)があれば甘い汁を吸えるとみんな思っているのだ。

歴代政権が足を引っ張られた不正・腐敗の根本的背景はこれである。左右や保守・革新系を問わず、この超法規的な人脈重視こそが〝積弊〟である。文在寅(ムン・ジェイン)政権下では〝民主化人脈〟が権力の甘い汁を吸っている。人脈文化からの絶縁がない限り不正・腐敗は繰り返される。(黒田勝弘)

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