コロナ その時、

(27)年明け早々から緊急事態 全国の感染最多に 2021年1月1日~

東日本大震災10年やソ連崩壊30年など多くの節目がある2021(令和3)年が訪れた。だが、丸1年となる新型コロナウイルスとの戦いは節目を迎えるどころか、国内では感染拡大の第3波がピークに達しつつあった。ついに緊急事態宣言が首都圏1都3県に再発令され、新年早々重苦しい空気が社会を覆った。

新型コロナウイルス禍の中で初めて世界は新年を迎え、祝賀ムードは吹き飛んだ。国内では例年1月2日に行われる新年一般参賀が、感染拡大の影響で中止された。昭和天皇の服喪中で開催されなかった平成2年以来となる。

「今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っています」

天皇陛下は新年に際し、ビデオメッセージで国民へのお言葉を寄せられた。初詣や初売りなど正月の風物詩も様変わりした。前年の三が日に約56万人の参拝客が訪れた伊勢神宮(三重県伊勢市)は約7割減の約17万人にとどまった。年末年始の帰省ラッシュも影を潜め、高速道路で前年に7回あった30キロ以上の渋滞は0回(昨年12月26日~1月3日)で、目立つ渋滞は確認されなかった。

世論が一気に支持

政府はまさに正月返上で対策に忙殺された。2日、西村康稔経済再生担当相のもとに、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県の知事が駆け込んできた。

「直ちに徹底した人の流れの抑制をはかる必要がある」。東京都の小池百合子知事は約3時間の面会でこう訴え、緊急事態宣言の再発令を要請。西村氏は「検討する」と応じたものの歯切れが悪かった。当時、都内の飲食店の営業時間は午後10時までで、さらなる時短要請に慎重な小池氏が国に責任転嫁しているのではないかとの不信感が政府内にあった。

だが、面会後に世論の支持は知事側に一気に傾いた。菅義偉首相は4日、首相官邸で年頭の記者会見に臨んだ。この日までに全国の新規感染者数は前年末から1週間連続で3000人を超えていた。「緊急事態宣言の検討に入る」と述べた首相は、すでに決意を固めていた。

政府の対策本部は7日、2月7日までの期間で1都3県に宣言を再発令した。「1カ月後には必ず事態を改善させる」。首相は記者会見でそう明言したが、8日の全国の新規感染者数は過去最多となる7844人を記録。感染拡大の勢いや変異株の広がりに、首相の決意にも不安が消せない国民は少なくなかっただろう。

医療にも深刻な影響が出ていた。1都3県の知事は2日の西村氏との面会で「通常医療にも大きな影響を及ぼす危機的状況だ」とする文書を提出。感染の急拡大は保健所の負担も増大させ、濃厚接触者や感染経路を詳しく調べる「積極的疫学調査」にも影響を与えた。

厚生労働省は8日、各都道府県に重症化リスクの高い集団に優先度をつけた調査を検討するよう通知した。神奈川県は、市中感染は原則対象外とするようかじを切り、9日以降、積極的疫学調査を大幅に縮小し、医療機関や高齢者施設を最優先するよう方針転換した。

コロナ禍に追い打ちをかけるように、強い冬型の気圧配置の影響で、東北や北陸の一部では倒木による断線などで停電が相次いだ。原子力発電所の再稼働が進まない中、火力発電を担う液化天然ガス(LNG)がほぼ底をつき、大規模停電の一歩手前まで需給が逼迫(ひっぱく)した。

米の感染2000万人超す

米国で6日、共和党のトランプ大統領の敗北を認めない支持者が連邦議会議事堂を襲撃・占拠した。上下両院が民主党のバイデン前副大統領の勝利を認定するのを阻止するためで、事件で警官ら5人が死亡した。

米民主主義に汚点を残す暴挙が非難されたのは当然だが、コロナ収束に楽観的だったトランプ氏の姿勢を反映してか、マスクをしない支持者も目立った。トランプ氏は驚くべきスピードでワクチン実用化にこそ道筋をつけたが、累計感染者は4日に世界最悪の2000万人を超えた。20日に大統領に就任することになるバイデン氏に、新型コロナをめぐる国民の危機意識における「分断」も解消する重い宿題を残したことは間違いない。

(26)2020年12月19日~ 東京、感染4桁に 変異株が上陸

(28)2021年1月9日~ ワクチン準備急ぐ 医療崩壊現実味

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