「五輪のもともとの目的は日本にスポーツ産業を根づかせるため。五輪招致以降、国内の市場規模は拡大しており、ある意味五輪開催の目標は達成している」と話すのはスポーツ文化評論家の玉木正之氏だ。
23年にはスポーツ界の悲願であるスポーツ基本法が成立し、27年にはスポーツ庁が発足。同庁によると、スポーツの市場規模を表す「スポーツGDP」は23年の約7兆円から29年には約8・4兆円規模まで成長している。
同庁はコロナ禍で落ち込む可能性があるとした上で、「令和元年まではスポーツ観光やスポーツイベントは大いに盛り上がった」と話す。
玉木氏は「体育から一般のスポーツ、プロスポーツを文化として根づかせるという足場はできた。五輪はいわば最後の祭りのようなもの。コロナ禍の中で危険を冒してまで開く必要はない」と指摘する。
東京に発令されている3回目の緊急事態宣言。今月17日来日予定の国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、宣言について、こう発言した。
「大型連休に向けて、蔓延(まんえん)防止のために行う措置だと理解している。東京五輪とは関係がない」
開催への影響を否定しようとしたつもりが、結果的にコロナ禍の国民感情を逆なでしたかたちとなった。
「トンネルの終わりの光となる」
新年のメッセージで、こう語っていたバッハ会長。その光は、灯(とも)るのか。灯ったとすれば、その光はどんな世界を照らし出すのか。
大会は7月23日に開幕することになっている。
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この連載は石原颯、橘川玲奈、大渡美咲、川峯千尋、石橋明日佳、大森貴弘、小川原咲、本江希望、飯島彩希、小林佳恵、鈴木俊輔が担当しました。