【ロンドン=板東和正】先進7カ国(G7)外相会合が英ロンドンで3日夜に開幕した。5日まで対面形式で行われる。権威主義を強める中国やロシアのほか、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーへの対応について議論する。G7が民主主義陣営として結束した立場を打ち出せるかが焦点となる。
G7外相会合は昨年、新型コロナウイルス流行の影響でオンライン形式だったため、対面での開催は約2年ぶりとなる。会合には茂木敏充外相やブリンケン米国務長官らが参加した。最終日に共同声明を発表する見通し。
初日は夕食会を兼ねてイランや北朝鮮の問題について協議した。北朝鮮核問題の解決を目指し、国連安全保障理事会決議の完全な履行が必要との認識で一致した。茂木氏が北朝鮮による日本人拉致問題の即時解決に向けた協力を要請し、各国が賛同した。
英政府などによると、4日はミャンマーの情勢について協議し、議長国の英国が国軍関係者らに対する制裁の拡大などを各国に要請する見通し。ロシアがウクライナ国境付近で戦力を増強させている問題や反体制派指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件などへの対応についても議論する。
4日の夕食会では、ゲスト国として招かれたインドや韓国、オーストラリア、南アフリカ、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のブルネイも参加し、インド太平洋地域での連携強化を確認。気候変動に対処する協力関係の構築についても話し合う。
会合の期間中に中国への対応策に特化した討議時間を設けるほか、最終日には新型コロナワクチンの公平供給や気候変動を巡る途上国支援などについて議論する予定。
ブリンケン氏と議長のラーブ英外相は3日、会合に先立ち、個別に会談。中国による人権侵害や民主派抑圧に対抗するため、協力を強化する方針を確認した。ロシアやイランの問題についても意見交換した。
ブリンケン氏は会談後の記者会見で「米英両国は新疆(しんきょう)ウイグル自治区での残虐行為や、国際的な約束に反する香港での民主派への弾圧に対処するため、強固な協力関係を続ける」と強調。「私たちの目的は中国を封じ込めたり、押さえつけたりすることではなく、ルールに基づく国際秩序を維持することだ」と強調した。
ラーブ氏は会見で「(香港に高度な自治を約束した)中英共同宣言を中国に守らせる必要があるという点で米国と意見が一致している」と述べた。
英国は会合で、G7に韓国、オーストラリア、インドを加えた民主主義10カ国の枠組み「D10」で中国に対抗することを提唱する見通しだ。
ラーブ氏は会見で「同じ価値観を共有し、多国間システムを守りたいと願う国々の活発な連携に対する需要と必要性が高まっている」との見解を示した。