朝晴れエッセー

年間賞に鈴木真衣子さん(41)の「4本目のリコーダー」

予想しない結末へ

 山田 さて「楕円(だえん)の面積」です。予想しないような結末でした。面積を求める解法についてはもはや理解が及ばないのですが先生と生徒のやりとりで関係性がよく伝わってきます。最後が最後だけに、生徒が自衛隊へ入隊したことが淡々と書かれているのが余計にぐっときます。

 玉岡 生徒が哨戒機で殉職してしまうんですね。

 門井 全体としての読み味が楕円についてではなく、人間そのものの話に仕立てられています。筆者はエッセーの書き手として優れています。

 山田 門井先生が〇をつけている「手形の記憶」についてお願いします。

 門井 5歳の娘さんを病気で亡くす痛切な話ですが、筆者は目をそらさず、細かなことも覚え続ける忍耐力というか克己心、そういったものに打たれました。最後の部分で娘さんの手形の話をし、自然な形で文章を結んでいます。痛切な体験とは別に技術もあり、構成もうまいです。娘さんの体が16キロとずしんと重いのに、頭は新生児のようにぐらぐらしているという表現はとても迫力がありました。強い文章ですね。

 玉岡 娘さんの手形に自らの手を重ね、どれくらい大きくなったか思い巡らせるのは切ないですね。この文章は体験された方でないと書けません。

 山田 年間賞を決めたいと思いますが、「4本目のリコーダー」で決まりでしょうか。

 玉岡 コロナものがたくさんありましたが、その中で残った1本でしたね。

 門井 胸を張ってこの1本といえるでしょう。改めて読んでみると、人間の心理の普遍性にふれているように思います。

 山田 では、各選考委員賞をお願いします。

 玉岡 私は山田部長も評価している「もしかしてコロナ?」にします。

 門井 僕も〇が2つ重なった「神社まいり」にしましょう。

 山田 文化部長賞は「楕円の面積」に。

 令和3年度も始まっています。引き続き読者のみなさんからの投稿をお待ちしております。

【プロフィル】門井慶喜さん

 かどい・よしのぶ 昭和46年、群馬県桐生市生まれ、大阪府寝屋川市在住。同志社大卒。平成15年「キッドナッパーズ」でオール読物推理小説新人賞を受賞しデビュー。28年「マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代」で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、「咲くやこの花賞」(文芸その他部門)をそれぞれ受賞。30年「銀河鉄道の父」で直木賞。

【プロフィル】玉岡かおるさん

 たまおか・かおる 昭和31年、兵庫県三木市生まれ、同県加古川市在住。神戸女学院大卒。平成元年「夢食い魚のブルー・グッドバイ」でデビュー。「をんな紋」「天平の女帝 孝謙称徳」など著書多数。20年「お家さん」で第25回織田作之助賞。近著に「姫君の賦(ふ) 千姫流流(りゅうりゅう)」「にっぽん聖地巡拝の旅 あずま下り編」など。大阪芸術大学教授。兵庫県教育委員を2期8年務めた。

会員限定記事会員サービス詳細