朝晴れエッセー

年間賞に鈴木真衣子さん(41)の「4本目のリコーダー」

重く印象的な一句

 玉岡 時代性が切り取られてよかった。戦争でお父さんが召集されたため、おじいさんが筆者を育ててくれたんですね。日本にそういう時代があったのだと書いていただきました。風化しない思い出を暑い夏が訪れつつあるのを感じながら書かれたのでしょうか。すごくよかったです。

 受賞の言葉もいいですね。月間賞受賞の連絡を受けた日が、お父さんの命日だったんですね。約20年前にフィリピンの島々をめぐって慰霊祭を行ったことも書いてありました。

 門井 8月月間賞選考会のときにも申し上げましたが、「祖父の神社参りは父の帰宅の日で終わった」という一文は重いですね。改めて読んでも息をのむほどです。印象的な一句でまとめるのは例えれば、立派な床柱のある座敷のような文章です。

 山田 玉岡先生と私の評価が重なった「もしかしてコロナ?」に参りましょう。

 玉岡 新型コロナの感染が拡大し、みなさん熱を出したり、体調が悪くなったりしたことがあると思いますが、その不安を上手に書いておられましたね。筆者が高齢でいらっしゃったので、なおさら最後の一文が効いていますね。とても共感したところを評価しました。

 山田 場面、場面で盛り上がりがあります。文章は柔らかく朗らかですが、息子さんが防護服姿で現れるなど、非常に緊迫していたんだろうと思います。

 玉岡 ラストの花火が対照的で、はじけちるエネルギッシュな美しさが目に浮かびます。

 山田 「つるべ落としの暮れ方」という文章の始まりも注目です。多くの経験を積まれたであろう91歳の方の表現であり、なかなかまねできませんよ。

 門井 3段落目でカタカナでの「ネツデタ」が効いていますね。機械のようになってしまい、意識が飛んでいるかのような表現が非常によかったです。いくつも話題がある作品は最後に盛り上がりを欠くことが多いのですが、花火というラストがきちんと用意されていました。

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