朝晴れエッセー

「鬼平」大好き・5月3日

「いつの世にも悪は絶えない…」

テレビドラマ「鬼平犯科帳」冒頭のナレーションである。数ある時代劇の中でも私の一番のお気に入り番組だ。ほとんどが再放送であるが、何度見てもいいものはいい。

今まで何人かの俳優が鬼平を演じてきたが、私は中村吉右衛門が演じる「鬼平」が大好きだ。

時には厳しく、時にはやさしく人情味があり、今の世にも通じる機微があるように思う。亡くなられた俳優も多く出演しておられるが、昔をしのび、懐かしくなるのは私だけではないだろう。

と同時に、時代劇が好きであった亡き母を思い出し、自分もその年齢に近づきつつあることを実感する。

ストーリーの結末は見るまでもなく分かっていても、プロセスの演出につい引き込まれてしまう。内容もさることながら、映像を飾る時季に応じた日本料理の数々に和の文化を感じる。

また、エンディングのちょっと時代劇にはそぐわないと思われるような、テンポの速いテーマソング『インスピレイション』に合わせた四季折々の映像が心を和ませる。

コロナ禍で巣ごもり生活も長期化している昨今、テレビを見る時間が増えた。そんな中、嫌な出来事を忘れさせてくれる楽しみのひとときが「鬼平犯科帳」である。

これからも、このような素晴らしい「池波正太郎」の世界を永く続けてほしいと願う。

高橋佐知子 71 大阪市中央区

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