【ロンドン=板東和正】G7議長国の英国は、昨年末にEUから完全離脱し、世界各国と新たな連携関係を築く「グローバル・ブリテン」構想を掲げている。インド太平洋地域を重視する姿勢を鮮明にし、G7に韓国、オーストラリア、インドを加えた民主主義10カ国の枠組み「D10」で中国に対抗することも提唱している。G7内の対中姿勢が必ずしも一致していない中、参加国をまとめられるかの手腕が問われる。
英政府は3月、今後10年間の外交や安全保障などの政策を定めた「統合レビュー」を公表し、インド太平洋地域への関与強化を明記した。レビューでは、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群をインド太平洋などに派遣する計画が盛り込まれた。空母打撃群は5~12月に日本やシンガポール、韓国、インドに寄港し、インド太平洋地域への「脅威に立ち向かう」(ウォレス英国防相)姿勢を示す。
ジョンソン英政権は、中国をにらんだ日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」への参加も検討している。英与党・保守党の元議員はG7外相会合について「英国の『インド太平洋への傾斜』を進める戦略の一環だ」との見方を示した。
ジョンソン政権は今回の外相会合にG7各国のほか、韓豪印、南アフリカ、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であるブルネイの外相らを招待した。
英政権はとりわけ、第5世代(5G)移動通信システムなどでの中国依存から脱却する上で「D10」の連携が重要だとみている。外相会合ではサプライチェーン(調達網)の強化に関する協議に韓豪印を参加させ、議論を深めたい考えだ。
南アフリカやASEAN議長国のブルネイについても、民主主義の価値観を広げ、インド太平洋地域の平和や安定につなげる狙いから外相会合に招いた。
ラーブ英外相は2日、英メディアに対し、覇権的な海洋進出を強める中国に対抗するためには「志を同じくする国々の連携を拡大することが最も重要だ」と強調した。