【コロナと五輪の現在地】(3)おもてなしの行方 対応分かれるホストタウン

ジャマイカ選手を激励するため、応援メッセージの動画を撮影する職員ら=昨年9月、鳥取県庁(同県提供)
ジャマイカ選手を激励するため、応援メッセージの動画を撮影する職員ら=昨年9月、鳥取県庁(同県提供)

 東日本大震災から10年がたった3月11日。宮城県石巻市で行われた追悼式に、同市がホストタウンとなっているチュニジアのモハメッド・エルーミ駐日大使が出席した。大使は献花台に花を手向け、深々と頭を下げた。参列した市民らは、その姿を温かく見守った。

 30年前、チュニジア出身の学生のホームステイをきっかけに交流が始まり、震災後には大使館職員らによる炊き出しなどの支援も寄せられた。平成30年4月、チュニジアのホストタウンに登録され、大会の延期決定前には剣道や水泳の選手が市内で事前合宿をした。

 同市の東京オリンピック・パラリンピック推進室の境辰也さんは「今のところ事前合宿の予定はないが、大会後にぜひ選手に来てもらい震災のお返しをしたい」と交流の継続を期待する。

 宮城県栗原市は事前合宿を断念した。南アフリカのホストタウンとしてホッケーチームが来るはずだったが、合宿時期と新型コロナワクチン接種の時期が重なる可能性が浮上。今年1月に南アと交渉し中止を決めた。同市社会教育課の鈴木隆之さんは「どちらも職員の人数が必要で同時は無理。市民が優先だと判断した」と述べた。

■手作り動画で応援

 新型コロナ禍での「おもてなし」を模索する自治体もある。ジャマイカのホストタウンとなっている鳥取県は、感染対策で聖火リレーの規模を縮小したが「一流アスリートとの交流を心待ちにする県民は多く、感動や興奮が生まれ子供たちのモチベーションにつながる」(県担当者)とみる。

 昨年は往来が制限される中、ジャマイカの人気レゲエ歌手、ボブ・マーリーの曲に合わせて県職員らがダンスする応援動画を作り、ジャマイカの選手団に送った。事前合宿では県内の高校生や大学生がメニューを考案したジャマイカ料理をふるまうほか、オンラインでの交流も検討している。

 神奈川県と藤沢市は、ポルトガルのホストタウンとして8月ごろに約50人のパラリンピック選手団を受け入れる。おもてなし機運を盛り上げようと、3月に選手団の紹介動画を公開。藤沢市在住のタレント、つるの剛士さんがナレーションを担当した。

 兵庫県姫路市もフランス柔道選手の事前合宿を受け入れる。フランス柔道の基礎を築いたとされる柔道家の川石酒造之助(みきのすけ)が姫路出身であることなど縁が深く、今年1月中旬にフランスの柔道連盟とのオンライン会議で予定通りの事前合宿を確認した。フランスの音楽を演奏するコンサートに選手を招くイベントなどを計画している。

■交流経験がレガシーに

 開催都市の東京では、おもてなしの役目を「都市ボランティア」が担う。大会運営を直接サポートするボランティアとは異なり、競技会場や主要駅などで国内外の観光客らを案内する。都が集めたのは昨年8月時点で約3万人だ。

 「だいたい自分自身の荷物が多くなりがち。コンパクトに整理して持ち込むことが意外と大事ですね」

 3月14日、都市ボランティアのオンライン交流イベントが開かれ、一昨年のラグビーワールドカップでボランティアを務めた「先輩」から実務的なアドバイスを受けた。

 大会の延期に伴って、辞退者も想定され、都は一人一人に意向確認を行っている。開催に懐疑的な見方も広がる中、士気を保つためにイベントを開催した。都は今後もこうした交流を積み重ね、辞退を最小限に食い止める考えだ。

 都ボランティア担当課長の下出享克さんは「困難な中でも、そろいのユニホームを着て『おもてなし』に臨む経験は何物にも代えがたいし、それこそ大会のレガシーになり得る。貴重なチャンスを逃してほしくない」と語る。