勇者の物語

「世論」逆襲、巨人になびく球界を一斉非難 虎番疾風録番外編220

ドラフト制度を見直そうと言い出した3球団のオーナー(左からヤクルト・前園、大洋・中部、広島・松田)
ドラフト制度を見直そうと言い出した3球団のオーナー(左からヤクルト・前園、大洋・中部、広島・松田)

■勇者の物語(219)

悲願の「ドラフト制度撤廃」へ事態は巨人の思惑通りに進みかけた。

11月24日、セ・リーグのオーナー懇談会が東京・芝の東京グランドホテルで行われた。懇談会には巨人を除く5球団、ヤクルト・松園、大洋・中部、広島・松田、中日・小山各オーナー。阪神は岡崎代表が代理として出席した。

この騒動の根底にあるものは何か。それを解決すれば「江川騒動」も解決へ向かう-という趣旨で話し合われた。2時間半後、音頭をとったヤクルトの松園オーナーが記者会見に臨んだ。

「ドラフトができてから巨人以外の球団は、真剣に野球経営に取り組んできたのか。真剣に取り組んでいれば、〝巨人志向〟の選手は出なかった-という自己反省も行った。そして、いま起きている問題はドラフトに対する巨人の提言であり、制度そのものを考え直そうという意見でまとまった」

松園、松田、中部3オーナーが読売本社に正力オーナーを訪ね、「ドラフト制度を再検討するので12球団のオーナー会議に出席して欲しい」と伝えた。まさに巨人の思惑通り。江川との電撃契約やドラフト会議のボイコットなど、巨人の一連のやり方への是非がドラフト是非論にすり替わっている。

実は3オーナーが巨人を訪ねた理由は別にあった-とも言われている。水面下で巨人のリーグ脱退-新リーグ設立の動きが始まり、「巨人が阪急や近鉄に声をかけている」という情報が飛び交った。3球団にとってそれは存続の危機。ドラフト制度の再検討を持ち出すことによって、巨人の心証を少しでもよくしておこうという狙いだ。

そんなセ・リーグオーナーたちの動きをマスコミは一斉に非難した。

「ズレた焦点」「ドラフト是非論は巨人の思うつぼ」「早くも巨人にご機嫌うかがい」「3球団、寝返りか」。それはまさに、巨人になびく球界への〝世論の逆襲〟だった。

過熱する批判の声にセ・リーグオーナー懇はたまらず「再検討」案を撤回。以後、巨人のドラフト制度撤廃の動きも沈静化。「江川問題」に関して各オーナーたちの意見も「コミッショナーの裁定に従うべきだ」-に変わった。そして電撃契約から約1カ月後の12月21日、コミッショナーの裁定が下った。(敬称略)

■勇者の物語(221)

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