「従軍慰安婦」という用語は不適切だとする政府の答弁書が閣議決定された。根拠なく「従軍」を冠した戦後の造語がまかり通っていたことが問題である。教科書にも使われており、早急な是正を求めたい。
日本維新の会の馬場伸幸衆院議員の質問主意書に答えた。閣議決定の意味を重く受け止めるべきだ。
「従軍慰安婦」は一部書籍で使われて広まった。慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話でも「いわゆる従軍慰安婦問題」と記されている。
答弁書では、朝日新聞が、慰安婦狩りをしたなどとする吉田清治氏の虚偽の証言に基づく報道を取り消した経緯に触れ、「従軍慰安婦」は「誤解を招くおそれがある」とした。「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」と明記している。
河野談話での使用について「当時は広く社会一般に用いられている状況にあった」と言い訳しているが、事実を無視した用語にすぎない。これを放置してきたことで、強制連行された「性奴隷」などという嘘が世界に広まった。
「従軍慰安婦」は河野談話を契機に、9年度から使用の中学教科書に一斉に登場した。偏向した歴史教科書への批判を受けて一時は消えたが、今春から使用されている中学教科書で復活した。先に検定結果が公表された高校教科書でも使われているが、不適切な表現が検定をパスしていたことにあきれる。当然、修正が必要だ。
朝鮮半島から日本への労働者動員に関し、「強制連行」の表現が不適切とする答弁書も閣議決定した。労働者に関し、移入の経緯はさまざまあり、「連行」などとひとくくりに表現するのは適切ではない、との指摘はもっともだ。
当時の国民徴用令に基づく徴用・募集・官斡旋(あっせん)による労務について、「強制労働」などと、実態を無視した批判が相変わらずある。事実をもとに、日本への不当な非難を排することが欠かせない。
政府は、河野談話を継承するとしている。だが、同談話は、慰安婦の強制連行などを裏付ける証拠のないまま、韓国側に配慮した作文であることが分かっている。談話によって日本の名誉が著しく傷つけられてきた。教科書などへの影響もいまだに続く。
やはり、この談話は撤回が必要である。