「老老介護」相次ぐ悲劇 追い込まれる当事者 新型コロナも追い打ちに

 高齢者が高齢者を介護する「老老介護」で無理心中や、介護する相手を殺害してしまう事件が相次いでいる。背景にあるとされるのが深刻な「介護疲れ」。負担が大きい老老介護へのサポートは急務だが、当事者が周囲に支援を求めることに否定的な事例は少なくない。高齢化社会がさらに進む中、新型コロナウイルスの影響も相まって孤立が加速する恐れもあり、「第三者の介入が必須」との声があがる。(王美慧)

姉を殺害した妹

 「介護に疲れ手をかけてしまった」。3月20日、東京都北区赤羽台にある団地の一室で、寝たきりだった女性(84)が殺害された。殺人容疑で逮捕されたのは82歳の妹。姉妹は2人暮らしだった。

 警視庁赤羽署や近隣の住民らによると、姉妹は団地に約40年住んでいたが、近所付き合いはなく、親族とも疎遠だったという。4年前には1年間、デイサービスを利用。だが通所が困難になり利用をやめた。

 「2年ほど前から寝たきりだった。経済的にも苦しく、楽にしてあげたかった」。食事や排泄(はいせつ)の介護が必要な姉の世話を1人で担っていたとされる妹は、こう供述した。周囲から生活保護を活用した介護施設への入所を勧められたが、妹は「人様のお金で助けてもらいたくない」と、かたくなに拒んだという。

 東京都内では昨年11月以降、老老介護をめぐる殺人や心中が少なくとも4件発生し、6人が亡くなった。

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