【聖火リレー つなぐ想い】震災の教訓伝え「地域に勇気を」 - 産経ニュース

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聖火リレー つなぐ想い

震災の教訓伝え「地域に勇気を」

聖火リレーに「地域に勇気を」との思いを込める戸井穣さん=千葉県旭市のいいおかみなと公園(長橋和之撮影)
聖火リレーに「地域に勇気を」との思いを込める戸井穣さん=千葉県旭市のいいおかみなと公園(長橋和之撮影)

千葉 旭市防災資料館の前館長 戸井穣さん(76)

 10年前のあの日、九十九里浜の最北端にある千葉県旭市に、最大7・6メートルの津波が3度にわたって押し寄せた。14人が亡くなり、2人が行方不明。市は東日本大震災で県内最大の人的被害を受けた。

 「教訓を後世に語り継がないといけない」と防災資料館の設立を市に進言。平成26年7月の開館から館長を務め、県内外から訪れる小中学生らに津波の恐ろしさや自主的な避難の大切さを伝えてきた。

 周囲に推され、聖火リレーのランナーに選ばれた。花や木を植える活動に取り組み、まちの復興にも力を尽くしてきただけに「地域に勇気を与えるためにも一生懸命走りたい」と意気込む。日課をウオーキングからジョギングに変え、体力作りに余念がない。

 旭市には、24歳で結婚したのを機に移住。県警の警察官として交通畑を歩み、白バイ隊員などを務めた。東日本大震災が発生したのは定年退職後、飯岡地域の区長会長を務めていたときだった。

 地域のお年寄りから「遠浅の海だから津波は来ないと教えられてきた」という話を聞いた。だが、文献を調べると過去にも津波の被害があったことが分かり、記憶の風化を防ぐ大切さを感じたという。

 市内のリレーコースは、いいおかみなと公園から、いいおかユートピアセンターまで海岸沿いの約2・1キロ。途中には、被災した住宅の跡地などに市との協働で住民らが作ったコミュニティーガーデンが3つあり、整備に一緒に汗を流した市立飯岡中の生徒もランナーを務める。

 7月2日のリレー当日に大きな花が咲き誇るようにと、ガーデンにはハイビスカスの仲間「タイタンビカス」の苗を植え、草取りなどの手入れを続けてきた。

 海岸沿いは今も空き地が目立つ。市は復興に加え、少子高齢化や過疎化といった難題も抱える。聖火リレーを「とにかく明るい行事にしたい」という気持ちは人一倍強い。(長橋和之)

戸井穣(とい・ゆたか)】 千葉県二川村(現芝山町)出身。県警の警察官を定年退職後、平成26年7月から令和3年2月まで旭市防災資料館館長。東日本大震災の翌24年に「花と緑で旭を元気にするプロジェクト協議会」を立ち上げ、会長を務める。旭市在住。