主張

高経年原発の復活 脱炭素社会への先導役だ

 運転開始から40年を超えた「高経年原発」の再稼働に向けた地元同意プロセスの最後の扉が開かれた。

 福井県の杉本達治知事が同県内に立地する関西電力の美浜原発3号機(美浜町)と高浜原発1、2号機(高浜町)の運転開始に同意したことによる前進だ。

 3基の原発は平成28年に原子力規制委員会による審査に合格しており、60年運転が可能な20年間の運転延長が認められていた。

 審査合格後の再稼働には地元同意が必要で、立地地域の美浜町と高浜町に続いて28日、杉本知事の同意も得られた。

 東京電力福島第1原発事故を受けて定められた原則40年の原発運転期間を超えて再稼働が実現する国内初の例となる。

 かつて54基を数えた国内の原発は福島事故後、33基にまで減少した。再稼働を果たした原発は、わずか9基にすぎない。これまでのところ、政府は原発新増設の計画を示していない。

 菅義偉首相は「2030年度までの温室効果ガス46%削減」を表明したばかりだが、それまでに約10基の原発が運転開始から40年を迎えてしまう。

 日本がこの国際公約の達成に近づくためにも、40年超えの認可を獲得する原発が後に続くことが必要だ。関電はその先導役を務める重責も担うことになる。無事故は言うまでもなく、不祥事の再発もあってはならない。

 40年以上の運転をする原発に対して「老朽」の言葉が冠せられることが多いが、この表現は当たらない。運転開始から30年を迎えた時点で大規模な点検を行い、計画的な機器の取り換えなどで新品に近い状態を保っている。

 交換が難しい原子炉圧力容器は鋼材の劣化がないことを厳密に確認した上での運転延長だ。

 米国の原発では60年運転が普及しており、80年運転も認められている。原子力政策を受け持つ経済産業省も、こうした事実を国民に広く明確に説明する努力に汗を流してもらいたい。

 国は現在、改定中の「エネルギー基本計画」で原発活用の明確な方針を打ち出すべきだ。

 また、原発が安全審査で停止している年数は「40年」から差し引くのが筋だろう。停止中に原子炉圧力容器の劣化は進まない。原子炉等規制法の改正が急がれる。

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