【コロナ直言(2)】有事の視点欠如 災害対応で臨め 藤和彦氏 - 産経ニュース

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コロナ直言(2)

有事の視点欠如 災害対応で臨め 藤和彦氏

【コロナ直言】(2)有事の視点欠如 災害対応で臨め 藤和彦氏
【コロナ直言】(2)有事の視点欠如 災害対応で臨め 藤和彦氏
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従来、国家存続の危機を招くのは戦争だったが、現在は感染症や災害、貧困、テロリズムなどの脅威に対する安全保障が重要視されるようになっている。つまり、パンデミック(世界的流行)は安全保障や危機管理の問題であり、新型コロナウイルスには「有事」の対応が必要だ。

感染症が珍しくない欧米ではこの意識が特に強まっている。しかし日本はここ50年以上、パンデミックを経験してこなかった。そのため保健所が減らされたりした。こうしたことは有事を想定しているとは考えられない。それがコロナ対策がうまくいっていない大きな原因だ。

あらゆるリスクを完全に排除する「ゼロリスク」を追い求めて治療薬やワクチンの承認に時間をかけ、医師や看護師、患者を都道府県を越えて動かすことも難しい。ワクチンも緊急性が高い地域での集中接種ではなく、典型的な「悪平等」で行われている。平時の発想の延長だからこそ、こうした対応になる。

安全保障の意識が低い日本で有事に対する理解を得るにはどうすればいいか。私は「災害」がキーワードになると考える。

地震や台風などの大災害時には、全国の災害派遣医療チーム(DMAT)を動かし、自衛隊も大きな力を発揮する。限られた資源を必要な場所で使うためのトリアージは当たり前に行われる。これはまさに有事の対応だ。感染症も「災害」ととらえれば、日本が培ってきたやり方で思い切った策を取れるのではないか。

例えば、血栓ができるリスクがワクチンにあるとしても、コロナ蔓延(まんえん)の深刻さと比較して、緊急的な接種を決めるというのが安全保障上の選択。しかし、平時の公衆衛生を担う厚生労働省にはこうした判断はできない。有事の司令塔は安全保障や危機管理の専門家らでつくる新たな組織に任せ、首相が責任を持つべきだ。

これまで日本は、平時を基準に無駄と思われるものを削減してきた。しかし今後は、日本の医療体制の良さを残しつつ、有事には行動変容できるように仕組みづくりを進め、備えにも投資しなければならない。

とはいえまず今の危機を乗り切る必要がある。安全保障の観点ですぐ実現できるのは、東京・大阪でのワクチンの集中接種だろう。緊急事態宣言よりも、目に見えて社会の雰囲気を変える効果があるはずだ。(聞き手 西山瑞穂)

ふじ・かずひこ 独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー。昭和59年、通商産業省(現・経済産業省)に入省。警察庁、石油公団(当時)、内閣官房などへの出向を経験し、内閣情報調査室時代にはパンデミック対応を研究した。