東南アジア諸国連合(ASEAN)がミャンマー問題を議論する特別首脳会議を開催し、暴力の即時停止や全当事者による対話の開始、特使派遣などで合意した。
開催を呼びかけたインドネシアのジョコ大統領らとともに、ミャンマーは、クーデターを起こした国軍のミン・アウン・フライン総司令官が出席した。
ミャンマー国軍は首脳会議での合意を受け入れ、群衆への無差別攻撃ともいえる激しい弾圧をただちにやめなければならない。
「内政不干渉」と「コンセンサスによる意思決定」が看板のASEANが加盟国の政治問題解決に踏み出したことは評価できる。
ミャンマーの混乱は地域の不安定化につながる恐れがある。事態収拾に向け、地域機構として積極的役割を担うべきだ。
首脳会議の議長声明は、暴力やその犠牲者について「深い懸念」を表明した。だが、問題は国軍が民主体制から力ずくで権力を奪取したことであり、この点に触れなかったのは極めて物足りない。
国軍は、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の2期目の政権発足を前に、スー・チー氏らを拘束した。
対話により問題解決を目指すというのなら、当事者が国軍とNLDであることを明示し、その前提としてスー・チー氏らの解放を要求すべきである。
本来は会議にNLDの代表も招くべきだった。ミャンマーの代表として出席した国軍総司令官に対し、一連の行動について厳しく問いただしたのか。国軍に遠慮した印象は否めない。
総司令官がASEAN首脳会議出席を権力の正当化に利用する可能性もある。国軍の言い分を追認することになっては、むしろ逆効果である。
スー・チー氏は新型コロナウイルス対策を怠った自然災害管理法違反などで訴追されている。支持者が作った「挙国一致政府(NUG)」は非合法化された。対話を入り口で拒否する態度であり、改めさせねばならない。
国際社会の関与として、対話を促すのは一つの方法だ。先進7カ国(G7)や国連が圧力を強めれば、ミャンマーがよりどころとするASEANの存在感は増し、仲介の困難は少なくなる。日本はこれら別々のアプローチの調整役の役割も果たすべきだ。