【ワシントン=塩原永久】バイデン米大統領が公約とする「労働者重視」の施策を加速させている。27日、連邦政府から清掃業務などを請け負う労働者に時給15ドル(約1600円)の最低賃金を義務付ける大統領令に署名。労働組合の支援策を検討する特命組織も政府内に立ち上げた。格差是正に取り組む姿勢をアピールし、労働者層の支持基盤を固める狙いだ。
賃金引き上げの大統領令は、連邦政府の庁舎で働く清掃員や給食担当者、修理業者らを想定。政府機関は2022年3月末までに時給15ドルを雇用契約に盛り込む。現在の時給10・95ドルから約37%の増額となる。
政府から請負契約する数十万人が対象になるとみられ、政府と契約関係がない幅広い労働者層への波及につなげたい考えだ。
バイデン氏は民主党支持者が多い労組の支援を重視してきた。26日には、労組結成を促進する施策を検討するタスクフォースを設ける大統領令に署名した。トップにハリス副大統領を充て、副議長をウォルシュ労働長官が務める。
民間企業の労働者に占める労組加入者は、1970年代の30%台から、近年は6%台まで低下している。従業員が労組を結成しやすくするため、関係省庁が180日以内に具体的な対策をまとめるとしている。
米政権は大統領令の文書で、労組の退潮により「労働者が力を失い、(会社に対する)発言権の低下を招いた」と指摘。賃金低迷や労働者の処遇改善に向け、組合の権限強化が必要だとの認識を示した。
連邦最低賃金の引き上げや労組に関連した労働法制の改正には、議会の承認が必要となる。大統領権限で実現可能な施策を次々と打ち出し、22年の中間選挙を視野に働き手の「中間層」を支える政策の実績づくりを急いでいるとみられる。