世界の論点

日米共同声明 52年ぶり「台湾」明記

その原因を、今年2月に中国で施行された「海警法」により、日中両国が「釣魚台」(沖縄県石垣市の尖閣諸島の台湾名)で衝突する可能性が大きくなり「日本国内で中国と関係改善したい意見が少なくなった」と分析した。同時に「反中派」の声が大きくなり、「中国との対抗を主張する岸信夫防衛相らの意見が主流となった」と指摘した。

今回の共同声明を受け、「台湾海峡は日米軍事同盟の適用範囲内に含まれただけではなく、日米と中国が対峙(たいじ)するときの核心的存在にもなった」とし、「台湾が米中の衝突に巻き込まれる危険性が高まっている」と同紙は懸念を示した。(台北 矢板明夫)

■中国 同調する国際社会に警戒

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は19日付で、「米日同盟はアジア太平洋の平和を脅かす軸になっている」と題した社説を掲載した。日米同盟を戦前の「日独伊三国同盟」になぞらえて、「米国の核心的な意図は覇権を守り、国際法と国際ルールに反する形で中国の発展を阻止することだ」と主張する。その上で「米国の独断専行は恐らく最後にはアジア太平洋の平和を台無しにし、日本はだんだんと米国のこの邪悪な政策の主要なアジアの共犯者と変わりつつある」との一方的な見方を示している。

特に神経をとがらせるのは、1972年の日中国交正常化以降初めて、共同声明に「台湾」に関する表記が盛り込まれたことだ。社説は、日本に対して「別の問題で外交戦術を振り回すのはいいが、もし台湾問題に巻き込まれれば自ら災いを招いて身を滅ぼす」と警告した。

台湾統一は、習近平国家主席が掲げる国家目標「中華民族の偉大な復興という中国の夢」の中核であり、バイデン米政権が台湾への接近姿勢を示す中で、日本など国際社会に同調が広がることを強く警戒する。

一方で、日米首脳会談に関する中国側の反応からは、日米両国との関係が制御不能な状態にならないよう、慎重に気を配っている様子もうかがわれる。会談後、中国側は「強烈な不満と断固とした反対」を表明して日米両国に厳正な申し入れを行ったが、駐中国大使の呼び出しには至っておらず、批判のトーンも抑制気味となっている。米国との関係改善を模索する中で、事態をエスカレートさせることを避けたいという習指導部の思惑がうかがわれる。

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