世界の論点

日米共同声明 52年ぶり「台湾」明記

菅義偉(すが・よしひで)首相は16日、米ホワイトハウスでバイデン米大統領と初めての日米首脳会談に臨んだ。会談後に発表された共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」ことが明記された。日米首脳共同声明に台湾が盛り込まれるのは52年ぶり。台湾紙は「国際社会による台湾支持の輪が広がっている」と歓迎。一方、中国紙は「米日同盟はアジア太平洋の平和を脅かす軸」だと批判し、共同声明に反発している。

■台湾 「日米台軍事同盟」へ期待

日米共同声明で「台湾海峡の平和と安定」に言及したことを受け、台湾の与党、民主進歩党に近い大手紙、自由時報は19日付の社説で、「中国軍機の挑発行為などにより、台湾海峡の緊張は高まっているが、国際社会による台湾支持の輪が広がっている」と指摘し、共同声明を歓迎した。

同社説で「ハト派といわれてきたバイデン米大統領は、トランプ前大統領の対中強硬路線を継承しただけではなく、日本、インド、オーストラリアなどと連携して中国と対抗する力を強くした」と指摘した上で、今回の共同声明の発表に伴い「中国と対抗することは日米の共同目標であることが明確となり、この形勢下で台湾はますます重要になる」との見方を示した。

そして、中国と対決する民主主義陣営の「先頭位置にいる台湾」は「中国の侵略から故郷を守る決心と勇気を一層強くしなければならない」と強調した同紙は、日米の信頼を勝ち取るために「中国による台湾への選挙介入、悪意のある企業買収、情報窃取などを阻止するための有力な措置を講じなければならない」と台湾当局に呼びかけた。

同紙は一方で、台湾の国防部(国防省に相当)の元幹部で、国際政治学者の姚中原氏の寄稿を掲載し「日米台軍事同盟」への期待を寄せた。「中国による台湾海峡への挑発行為が拡大するに伴い、日本の安全にも大きく影響することは必至だ」とし「これからは米国が中心となり、既存の日米同盟と米台軍事交流をさらに深化させ、いずれは日米台軍事同盟を形成させていくことも可能だ」と指摘した。

台湾の親中派メディアとして知られる聯合報も19日付社説で日米共同声明を取り上げ「恐中症(対中恐怖症)にかかっているといわれてきた日本にとって、大きな一歩を踏み出した」と論評した。中国と対抗することに「消極的」だった日本だが「今回は積極的に動いた」と指摘した。

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