朝晴れエッセー

心温まる言葉・4月26日

数年前、朝出かけるときの言葉がけについて面白い記事があり、興味深く読んだ。

それは「いってらっしゃい」という言葉が東西で言い方が違い、文化の違いを感じさせるというものだった。東京の下町あたりでは、「いっといで!」、京都では「おはようおかえり」と言うのだと。

「いっといで!」という響きは江戸の名残を感じさせる。江戸っ子はさっぱりとした気性なので、家人を送り出すとき、威勢よく突き放したような言い方になるのだろう。これが、京都の人から言わせると冷たく感じるようだ。

一方、京都の「おはようおかえり」は、無事に帰ってきてくださいという気持ちがこもっており、思いやりが感じられると筆者は言っていた。

江戸っ子は人情が厚く涙もろいともいわれ、決して思いやりがないわけではない。誰よりも心配りができるのではと私は思っている。ただ言い方や字面だけを見ると記事のように感じる人もいるかもしれない。

これを読んで、私はどうかなと考えた。母の顔が浮かび、西の文化だとすぐに納得した。毎朝、母はこう言っていた。

「いってかえり!」

そこには、ちゃんと無事に帰っておいでという優しさが詰まっていた。対して私は「いってかえりま~す」と返していた。

この春、下の息子が進学のため家を出た。卒業後はもう地元に帰るつもりはないという。覚悟の旅立ちでもある。でもこう言って送り出した。

「いってかえり!」

いつか「ただいま」と帰ってくれることを願いながら。

小林浩樹 59 広島県呉市