朝晴れエッセー

重かった…・4月25日

知人と出かけた骨董(こっとう)市で年代物のアコーディオンが売られていた。蛇腹はほころび金具はさび放題というシロモノ、でもこれ確か高いんだよな。そう思い返した瞬間、肩にずしりと重みがよみがえった。

昭和40年代初め。近在の小中学校に一斉に鼓笛隊ができた。私の通っていた小学校では5、6年生は全員参加、放課後毎日練習があった。

私の担当はアコーディオン。学童用の小型もあったが、体格がよかったので教師用の大型を任された。象牙張りの鍵盤に銀金具という骨董市のとよく似た高級品だ。先生から何度も「舶来の値打ちモンだで壊しちゃかんで」。

そんな大層な物、子供にやらせるなよと内心不満に思いつつ練習した。これが半端なく重い上、大きくて足元が見えない。

演奏しながら行進するときはフラフラヨロヨロ、真っすぐ歩くことがあんなに難儀だったことはない。その分、練習が終わって楽器を肩から下ろした一瞬、あの体が浮き上がるような解放感は格別だったけど。

6年生の秋。市内の鼓笛隊の合同演奏会があった。終了後、控室で着替えていると級友が「あれ? なんか左腕が右より太くない?」。確かに。毎日頑丈なアコーディオンの蛇腹を引っ張っていた成果なのだろう。やったーというかやれやれというか…。

骨董市の帰り、知人に「昔、鼓笛隊でアコーディオン弾いてたの」というと、「鼓笛隊? うちの近所の学校にもあったけど、ラッパの音がうるさいって苦情がきてやめたみたい」。そういう時代なのね。

清水奈緒美 64 愛知県日進市