ジャズピアニスト、桑原あい コンプレックス乗り越え初のソロ作品  

出会い

 桑原は電子オルガンの「天才少女」と呼ばれたが、中学生のときにピアノに転向した。平成24年に21歳でCDデビューしてからは定期的に作品を発表し、大型のジャズフェスティバルなどにも出演。テレビのニュース番組の主題曲も手がけるなど活躍の幅も広く、順風満帆に見えるが、「3年前まで、ピアノにコンプレックスを抱いていた」と意外な告白をする。「自分が思うような音を出せないことを、ずっと悩んでいました」

 乗り越えられたのは、多くの出会いのおかげだという。

 「技術に不足はない。表現力は歳月を重ねれば得られる。あとは生きて経験するだけだ」。23歳の頃、米国の超大物プロデューサー、クインシー・ジョーンズにかけられたこの言葉が、ピアノを続ける原動力になっている。

 身長155センチの女性がピアノという大きな楽器をどう弾けばいいかを体得できたのは、骨格や筋肉など身体の観点から指導してくれたピアノ教師と出会えたおかげだ。

 「演奏を楽しんでいますか?」と尋ねてきたのは米の大物ドラム奏者、スティーブ・ガッドだった。はっとした。「楽しんだことなどなかった。自分はピアノとけんかしていただけだ。だから、こわばった音しか出せなかったんだ」

 ガッドとベース奏者のウィル・リー。世界最高峰の演奏家と共演したが、2人はいつでも演奏を楽しんでいたし、周りの人たちを笑顔にした。

 「音楽は、演奏する人の生き方を反映するのだと発見しました。それからは私も日常を大事にするようになりました。その頃から、あ、今、ピアノが喜んでいるって感じる瞬間が増えていったんです」

 ようやく「自分が思うような音」を鳴らせるようになった。