【政治月旦】組織戦がやりづらい コロナ禍の選挙とは - 産経ニュース

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政治月旦

組織戦がやりづらい コロナ禍の選挙とは

自民党広島県支部主催の街頭演説会で演説する自民党新人の前を素通りする通行人
自民党広島県支部主催の街頭演説会で演説する自民党新人の前を素通りする通行人

新型コロナウイルス禍の選挙はどうなるか-。25日に3カ所で行われる衆参の補欠選挙・再選挙の応援で現地入りした自民党の閣僚経験者は「組織戦がこれほどやりづらいとは思わなかった」と困惑の表情を浮かべた。

訪れた地域は年明けに感染が急増し、現在も一進一退の状況が続く。緊急事態宣言などの区域外であっても「大声を出すイベント」の入場者を収容定員の50%以下に抑えるよう政府が求めていることもあり、各候補は演説会などの参加人数を減らしている。従来、保守系の組織票を武器としてきた自民勢力にとって、集会の人数制限は想像以上のダメージになるという。

この閣僚経験者によると、収容定員1千人の会場で集会を開く場合、通常は欠席も見越して2千人に個別に参加を呼びかける。参加者を半数の500人に絞る場合はどうか。なにがあっても顔を出す固い支持者が400人程度いることも加味し、陣営から直接声をかけるのは合計で700人程度に抑えるという。

「声かけ自体が選挙活動につながるので、欠席が出ても無駄にはならない。それだけに1千人の集会で2千人に案内できるはずが、700人に抑えざるを得ないのは痛い。こうしたケースが重なると選挙全般への影響も大きくなる」

閣僚経験者は、現地で複数の企業や団体を回ったものの、擁立候補の名前はいつものようには浸透しにくいと感じた。そもそもコロナ禍で出社人数を絞ったり、部分的な休業を余儀なくされたりする企業も多く、関係先に細かく集票を頼む手法にも限界がある。

人の動きが制限される中、とりわけ新人候補の知名度を向上させるのは至難の業だ。「こういう選挙で有利になるのは、固い支持基盤を持つ現職か、空中戦に強い候補だろう」。選挙区を1日回った閣僚経験者は疲れた表情で漏らした。

衆院議員の任期は10月21日までだが、衆院選を任期いっぱいまで引き延ばしたとしても、不安が解消するほどコロナを押さえ込める可能性は高くないだろう。菅義偉(すが・よしひで)首相は9月末までに16歳以上の全員分のワクチンを調達する見通しを明らかにしたが、実施に当たる医療従事者の調整などを考えれば、10月までに打ち終えるとは思えないからだ。

感染対策に気を配りながら迎える衆院選について、自民党三役経験者は「新人候補はもとより、『魔の3回生』の優劣がくっきり表れる戦いになる」と警鐘を鳴らす。

現在の自民には、野党だった安倍晋三総裁下の平成24年衆院選で初当選し、当選3回を数える衆院議員が約80人いる。彼らはこれまで、安倍氏が安定政権を運営するなかで勝ち抜いてきた。その分、地元の組織固めや新たな支持者の掘り起こしなどがおろそかになる議員も多い。既存の組織頼みの戦いとなれば、現職といえども足をすくわれるパターンが増えるかもしれない。

一方、野党が有利になるかというと、そう簡単な話ではない。新人候補の多さは自民の比ではない。労組など支持組織の引き締めが難しいのは自民と同じ構図で、候補の知名度を向上させるのは一筋縄ではいかないからだ。

主要野党の政党支持率は軒並み一ケタ台にとどまってもいる。野党党首は選挙戦で、政権批判を中心とする「空中戦」を仕掛けようと世論をあおるだろうが、有権者から与党に勝ち切れるほどの信頼を得ているとも思えない。

働き方や価値観が多様化するなか、組織戦は年々難しくなる傾向にあったが、社会を分断する威力を持つコロナ禍は、この流れに拍車をかけそうだ。組織の締め付けが弱くなる分、有権者の個別の評価が、選挙結果により色濃く反映される気がしてならない。

浮動票が少ないとされてきた地方でも、一部で地殻変動が起きるかもしれない。「保守系が強い」「革新の牙城」といった固定観念は、コロナで溶かされるのだろうか。

衆院選は政権選択選挙であり、一義的には菅政権のコロナ対策の是非などが問われる。時期によっては、東京五輪・パラリンピックの成否なども選挙結果を左右するだろう。ただ、こうした前提とは異なる次元で、与野党関係なく、慢心のツケを払う候補が増えそうな予感もする。(政治部次長 水内茂幸)