【ワシントン=塩原永久、北京=三塚聖平】バイデン米政権は気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)で、発展途上国や低所得国に対する温暖化防止の支援に力を入れる方針を鮮明にした。世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、先進諸国こそが排出削減で一段と重い責任を負うべきだとする途上国の立場を代弁した。米中が気候変動問題で途上国への影響力を競い合う構図が生まれつつある。
バイデン大統領は22日に発表した「気候ファイナンス計画」で、途上国向け温暖化防止の支援額を2024年までに、歴代政権で最高水準だったオバマ政権期の平均額から倍増させるとした。
開発援助を担う米国際開発庁(USAID)も、温暖化対策を援助基準に組み込むなどした「環境戦略」を策定するといい、温暖化による災害増加といった被害を受ける途上国への支援を手厚くする。
バイデン政権がこうした政策を発表した背景には、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じ、アジアやアフリカの途上国で影響力を高めてきたことがある。
トランプ前政権期には有効な対抗策を打ち出せなかったとの指摘が根強く、バイデン政権には途上国との関係強化に向けた「包括的な戦略が不可欠だ」(米シンクタンク研究者)との声があった。
バイデン氏はサミットで「米国は待たない。行動すると決意した」と力を込め、温室効果ガス排出の国別削減目標を大幅に引き上げると発表した。日本やカナダなども、バイデン政権と足並みをそろえ、削減目標を引き上げた。
バイデン氏はまた、中国も念頭に「米国が世界の排出量に占める比率は15%に満たない。主要国全てが目標を高めるべきだ」と呼びかけた。