【美村里江のミゴコロ】麗し、恐ろしのカツラ - 産経ニュース

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美村里江のミゴコロ

麗し、恐ろしのカツラ

前回に引き続き、大河ドラマ関連で鬘(かつら)(かつら)の話をしたい。着物を着て鬘をかぶると、にわかに時代劇当時の世界へ集中できる、ありがたい存在だ。これまでかぶらせていただいたのは、大まかには3種類だろうか。

まず「全鬘」、画質の粗い頃の時代劇はほぼこれである。本人の生え際に関係なく、美しい富士額などにしていただけるが、かつてより軽量化しているとはいえ、重い。小麦粉や塩の1キロの袋を頭に乗せてもらったら、大体その重さである。生え際は網目に植毛してあるので、高画質での撮影が厳しいようだ。

「半鬘」は現在最も多く用いられている。前髪ともみあげ周辺は自前の髪を使い、頭頂から後頭までの造った髪形になじませるので、自然な仕上がりで動いてもズレにくい。この半鬘のうち私は「結い上げ」と「垂髪」を経験した。前者は典型的日本髪で、後者はいわゆるお姫様というイメージの髪形である。

時代劇中の髪形は立場により変わる。今回(大河ドラマ「青天を衝け」)は、夫の一橋徳川家当主慶壽(よしひさ)が亡くなる場面から出演。ということは…。

打ち合わせで主要な質問を終えた後、「後家なので尼さんの格好ですか」とお尋ねした。先輩方からうかがってきたのだ、「あれは楽よ、頭巾をかぶるだけだもの」と。実際、長い髪を入れ込んだ丸刈りの鬘を自然に見せるのは難しいため、尼僧役は頭巾姿が多い。

しかし残念ながら(?)今回は画面上の華やかさ優先で、「切り髪」となった。結い上げてあった髷(まげ)(まげ(を切った未亡人の髪形。これはこれで独特の趣があり、かぶると毎回夫を亡くしたことが思い出され、役の根幹に触れられる。

芝居まで助けてくれている鬘だが、これは「型」のおかげだ。「鬘合せ」で頭の形の金具を仕立てていただき、その撮影所ではそれが土台になる、いわばオーダーメードの鬘。結髪さんの技術もあり、快適な着用感である。

しかし頭部は急所、恐怖譚(たん)も残る。その昔、例えば遊女役のエキストラさんたちは出来合いの3キロ巨大鬘をかぶり、ロケ先までバスで山道1時間半。カーブの度に鬘内部が打ちつけられ、頭がこぶだらけに…。孫悟空の頭にはまっている緊箍児(きんこじ)の効き目を痛感されたという話だ。

技術進歩した現代で良かったと心底思いつつ、今後も多くの鬘を経験したい。