論壇時評

5月号 尖閣防衛日本自ら「中国の脅威」に立ち向かえ 論説委員・岡部伸

だからこそ米豪も真剣で、空母や艦船を太平洋まで派遣する英仏独など欧州各国も並々ならぬ関心を寄せている。

「日本は『尖閣防衛のグローバル化』に成功した」と笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄は『中央公論』5月号で指摘する。中国の尖閣侵攻を、南シナ海と同じグローバルな「ルールに基づく秩序」への挑戦と、欧州の関心を高めてきたからだ。

しかし同時に「日本の尖閣防衛への責任が増したことを忘れてはいけない」と戒める。「日本の尖閣防衛の不備は、米中の対立激化に繋(つな)がり、地域と世界を不安定化させるからだ」

中国はインド太平洋から世界に広がる日米同盟にくさびを打つことが緊急課題で、渡部は、「現状の日本の防衛体制には、尖閣防衛において中国が日米離間策を試してみたくなるような隙が存在する」と訴える。

想定されるのは、(1)中国公船が日本漁船を追尾し、それに対して海上保安庁の巡視船が中国公船の行為を中断させる(2)中国の海上民兵が密(ひそ)かに尖閣に上陸し中国国旗を掲げ、海上保安庁の退去要求に応じない-ケースであり、いずれも中国側が武器を使用する可能性がある。

日本政府は、2月25日の自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議で、(1)の場合、海上保安庁による「危害射撃」が可能だが、(2)の問題意識への対応はなく、「凶悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える『危害射撃』が可能になる場合がある」と説明した。

渡部は、「尖閣上陸は国家の侵略行為であり、日本の国内法である刑法を基にした警察権で外国の公船や軍艦に対応することは、国際法とも矛盾する」との香田洋二元自衛艦隊司令官の談話を引用し、「国内の政治的経緯によって生じた世界に通用しない法的制約を脱し、国際標準に基づく領海防衛体制を作り上げることが必要」と唱える。

そして、海上保安庁が、尖閣周辺で中国の海警局の公船に対処するため、海上自衛隊とシームレスに行動できる法整備が喫緊(きっきん)の課題だと説く。

米ソ冷戦時代に西独が最前線となったように、日本は、今、米中新冷戦の最前線に立たされている。味方につけた米国と欧州の世論から見放されないよう事前に国際標準である交戦規定を定め、非常時に自衛権を発動し、自衛隊が迅速対処できるよう取り組むべきだ。=敬称略

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