台湾、出生率世界最低の予測 少子化深刻

台湾の蔡英文総統(田中靖人撮影)
台湾の蔡英文総統(田中靖人撮影)

 【台北=矢板明夫】米国の中央情報局(CIA)が22日までに発表した年次報告書の「2021年の国・地域別の合計特殊出生率予測」の項目で、台湾は世界で最も低い1・07となった。台湾メディアは「うれしくない世界一」「少子高齢化はいよいよ危機的状況」などと大きく伝え、蔡英文政権に対し、早急に対策を取るように促している。

 CIAの予測では、台湾の今年の合計特殊出生率は1・07で、韓国の1・09とシンガポールの1・15を下回り、227カ国・地域の中で最も低かった。日本は1・38で218位、世界で最も高いのはナイジェリアの6・91だった。全体的にアジアが低く、アフリカが高い傾向にある。合計特殊出生率は「1人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均値」で、2を超せば人口は増加に、2未満なら減少に転じる計算になる。

 台湾当局の統計によると、2016年までの出生数は年間20万人を超えていたが、その後は徐々に減少。昨年は約16万5000人で、死者数の約17万3000人を初めて下回り、統計史上初めての人口減少を記録した。今年の1~3月の出生数は昨年と比べて1割以上減っており、人口減少に拍車がかかっている。

 出生率が近年、低下した理由について、台湾産婦人科医学会の黄閔照氏は台湾メディアの取材に対し、「結婚しない人、結婚しても子供を産まない人が増えるなか、昨年から今年にかけて、コロナ禍で結婚、出産を控えた人が多かった」と指摘した。また、別の専門家は「台湾で未婚の母による婚外子は約4%しかなく、欧米諸国の約10分1に過ぎない。『結婚してから子供を産む』という儒教的な考え方がいまだに根強く、シングルマザーに対する社会の支援体制も弱い」と指摘した。

 台湾誌「今週刊」が2~3月、15~49歳の市民1068人を対象に行った世論調査によると、約67%が「経済的圧力」などを理由に「子供を産みたくない」と答えた。「育児休暇による収入減」や「教育費の高さ」を心配する人が特に多かったという。

 蔡政権はこれまで、少子化対策として教育費を一部減免するなどの施策を講じ、今年8月から毎月の育児手当を2500台湾元(約9500円)から3500台湾元(約1万3000円)に引き上げ、来年はさらに5000台湾元(約1万9000円)にすると発表している。だが、同世論調査では「政府の支援が不十分だ」と答えた人が半分を超え、さらなる支援策を期待する人が多かった。