「俺は買うけどね」SNS駆使した相場師トンピンの手口

 株式市場の規制強化であまり見かけなくなった相場師と呼ばれる人々は、今も健在のようだ。大阪地検特捜部は今年3月、「トンピン」の名で個人投資家らに知られた相場師、山田亨(とおる)被告(48)を金融商品取引法違反(安定操作)の疑いで逮捕、起訴した。人為的な相場で投機的な売買を繰り広げる「仕手戦」を仕掛け、巨利を狙うとされる相場師。被告はSNSを駆使して「現代戦」に挑み、巧みに人の心理を操っていた。(土屋宏剛)

群がる「イナゴ」

 平成30年3月、京都府京田辺市に本社を置く金型メーカー「ニチダイ」の株価が急騰した。ジャスダック市場に上場していたものの、さしたる注目銘柄でもなかった株の激しい値動きに、一部の投資家は騒然となった。

 仕掛けたのは、過去に何度も値上がりする銘柄を的確に予測し、SNS上で「トンピン」の名で通っていた山田被告。取り上げる銘柄は「トンピン銘柄」と呼ばれ、売買の動向は一部の個人投資家にとって注目の的だった。

 捜査関係者によると、被告は今回、次のような手口でもうけを狙った。

 (1)安価なニチダイ株を買い集める(2)SNS上でニチダイ株が注目株であると発信し、個人投資家の購入をあおる(3)個人投資家らがニチダイ株に群がり、取引が過熱(4)株価が上昇する(5)高値で売り抜ける-。

 著名な相場師の情報に飛びつく投資家は、稲穂に群がる昆虫になぞらえ「イナゴ」と揶揄(やゆ)されている。被告は、自らに追随して利益を得ようとするイナゴの心理を利用したわけだ。

5倍超に株価急騰

 こうした山田被告の行為は、相場の人為的な変動を禁じた金融商品取引法に抵触するものだった。

 特捜部の発表によると、ニチダイ株が急騰していた3年前の3月9日、「増担保(ましたんぽ)規制」が解除される3050円以下に株価を抑えようと、被告は大量の売り注文を出してわざと一時的に値を安定させ、規制がかかるのを回避したとされる。

 株価が極端に急騰すると規制が入り、新規の信用取引に必要な保証金の額が増加。取引の過熱感が冷めて買い注文が落ち着き、場合によっては急落に転じる恐れがあった。

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