インド、感染急増でワクチン輸出停止 隙狙う中国に危機感 - 産経ニュース

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インド、感染急増でワクチン輸出停止 隙狙う中国に危機感

17日、週末の外出禁止令のため人通りが途絶えた、インドの首都ニューデリーの商店街(共同)
17日、週末の外出禁止令のため人通りが途絶えた、インドの首都ニューデリーの商店街(共同)

 【シンガポール=森浩】インドで新型コロナウイルス感染者が急増している。政府はワクチンの国内接種を優先させるため、輸出を一時停止。インドが大口供給元となる予定だった、ワクチンを共同購入して途上国に供給する枠組み「COVAX(コバックス)」にも影を落としている。ワクチン輸出を通じて国際的な影響力拡大を狙うモディ政権の「ワクチン外交」は方針転換を迫られた形だ。

 インドでは変異株の感染が3月中旬から急拡大し、連日のように過去最多を更新。19日には1日当たり27万人の新規感染者が確認され、累計感染者は1500万人を超えた。2つの変異株の特徴を併せ持つ「二重変異ウイルス」が確認され、猛威を振るっているという。首都ニューデリーでは19日夜から1週間の外出禁止令が発出されるなど、各地で対策が強化された。

 インドは国内需要を優先させるため、3月下旬ごろからワクチン輸出を制限した。英アストラゼネカが開発したワクチンを製造する地元企業セラム・インスティテュート・オブ・インディア(SII)は生産が逼迫(ひっぱく)し、政府に生産設備増強への資金援助を求めている。政府は今月13日、ロシアのワクチン「スプートニクV」の緊急使用を承認するなど、輸出どころか逆に輸入推進にかじを切った。

 影響を受けているのが、2月に分配を開始したコバックスで、5月までにSIIから1億回分以上のワクチンを受け取る予定だったが、輸出制限でまだ約1900万回分にとどまる。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は9日、「課題はコバックスを通じてワクチンを出すことではなく、コバックスに入れることだ」と述べ、インドの輸出制限を念頭にワクチンの供給不足を指摘した。

 インドは世界のワクチンの6割を生産する「製薬大国」。モディ首相は「インドは世界の薬局」と話し、ワクチン輸出を通じ、インドの国際的な存在感を高めたい意向だ。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は3月の首脳会合で、インド太平洋地域での新型コロナ対策としてインドでワクチン製造を拡大させる方針も決めていた。

 インドは約13億人の人口を抱えるため国内の需要拡大は続くとみられ、インド政府関係者によると輸出制限は解除の見通しが立たない。隙を突くように中国がワクチン外交を加速させる可能性もあるため、モディ政権は国内の感染を早急に押さえ込みたい考えだ。