北アイルランド暴動激化 紛争再燃も懸念

 【ロンドン=板東和正】英領北アイルランドで、英国統治の継続を望むプロテスタント系住民とアイルランド統一を求めるカトリック系住民が衝突する暴動が激しさを増している。背景にあるとみられるのが、英国の欧州連合(EU)離脱で生じた国境問題だ。1998年の和平合意後に沈静化した紛争の再燃が予想される中、北アイルランドの帰属をめぐる住民投票に向けた機運が高まっている。

 英BBC放送などによると、北アイルランドの中心都市ベルファストで今月7日、プロテスタント系とカトリック系住民計数百人が居住地域を分ける「平和の壁」付近で衝突。双方が火炎瓶などを投げ合った。

 暴徒化した一部の住民は警察官らを襲い、一般道路上で路線バスに火を放った。暴動は8日も続き、現地警察は6年ぶりに放水車を使って鎮圧したという。

 昨年6月に死去したカトリック系のアイルランド共和軍(IRA)元幹部の葬儀をめぐり、IRAの政治組織「シン・フェイン党」の政治家ら約2千人が新型コロナウイルス対策の規制に違反して参列しながら、警察当局が今年3月末に参列者への立件を見送ったことが暴動の発端となった。プロテスタント系は政治家らの行動を問題視していた。

 警察当局の判断に反発したプロテスタント系住民が同月末に北西部ロンドンデリーで警察車両に火炎瓶やれんがなどを投げつける暴動を開始。その後、暴動は北アイルランド各地に広がり、カトリック系住民も巻き込んだ大規模な騒乱に発展した。これまでに約100人の警察官が負傷したとみられ、英紙テレグラフは「ここ数十年で最悪の暴動だ」と警戒感を示した。

 暴動を受け、ジョンソン英首相は今月8日、「(主張の)相違解消は対話で行うべきだ」と非難。米バイデン政権も沈静化を呼びかけた。

 しかし、暴動が完全に収束する気配はない。エリザベス英女王(94)の夫、フィリップ殿下が9日に99歳で亡くなったことを受け、王室への忠誠心が強いプロテスタント系住民が暴動を一時停止したとの情報があるが、ベルファスト市民(52)は「緊張状態は続いており、暴動は再び激化する」と予測した。

 収束が遅れる恐れが懸念されるのは、EU離脱で生じた国境問題への不満が暴動の根底にあるとみられているためだ。