【世界の論点】ワクチンパスポートの是非(1/3ページ) - 産経ニュース

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世界の論点

ワクチンパスポートの是非

新型コロナウイルスワクチンの接種を証明するため、米ニューヨーク州が導入した「エクセルシオール・パス」の画面 (AP)
新型コロナウイルスワクチンの接種を証明するため、米ニューヨーク州が導入した「エクセルシオール・パス」の画面 (AP)

新型コロナウイルス対策として各国が奨励するワクチン接種。接種したことを証明するワクチンパスポート導入をめぐる是非論が起きている。フランスでは、「個人の自由の侵害」などを理由に否定的見解が国民に根強く、仏識者は「受け入れが難しい」と指摘する。一方、米国では、ワクチンパスポートを州政府が発行すべきか否かについて民主、共和間で党派対立の様相を呈す中、米紙は接種証明の在り方そのものを問いかけている。

フランス 世論の7割「導入に否定的」

フランスでは、ワクチンパスポートへの抵抗感が強い。2~3月に行われた世論調査では、73%が「導入に否定的」と答えた。「個人の自由の侵害」「接種していない人への差別を生む」「効果に疑問」などが、主な理由にあげられた。

医療倫理の専門家、パリ・サクレー大のエマニュエル・イルシュ教授は、2月21日の仏紙リベラシオン(電子版)への寄稿でワクチンパスポート導入に反対した。ワクチンを接種した人だけに移動や会食などの権利を認めれば、「ワクチン接種者だけが社会的な信用、敬意を受けられるようになる。非接種者には『規則を守らず、無責任だ』という疑念の目が向けられかねない」と警告した。

3月11日発行の仏週刊誌ルポワンでは、パリ・ディドロ大の社会学者、ジェラルド・ブロンネル教授が、ワクチンパスポートは接種した人の自由を回復し、経済復興を急ぐことにも役立つものの、「社会心理学の面から、受け入れが難しい。不満や怒りを生む」と指摘。フランスを含めて欧州各国は現在、高齢者の接種を優先しているため、「若者が敗者になる」と主張した。

欧州連合(EU)ではワクチン接種の共通証明書導入をめぐって、議論が分かれた。観光産業への依存度が大きいギリシャやスペイン、ポルトガルが導入を強く求めたのに対し、フランスは「一部の接種者だけに権利拡大を認めるべきではない」(ボーヌ欧州問題担当副大臣)として、ドイツやベルギーとともに慎重論を唱えてきた。デンマークやスウェーデンは、国内で独自のデジタル証明発行を進めると表明した。