国家を哲学する 施光恒の一筆両断

「運」よりも「恩」日本の伝統を生かすべきだ

 このところ、日本人スポーツ選手のさりげない行為が海外で称賛されることが相次いだ。一つは、男子ゴルフの松山英樹選手が初優勝したマスターズ・トーナメントで、キャディーの早藤将太氏が試合後にコースに向かって一礼したことだ。もう一つは、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が、打席でファウルチップを打った際、打球が当たった相手チームの捕手に「ソーリー(すみません)」と謝罪したことだ。

 日本人は 経済的凋落(ちょうらく)が続くせいか、自分たちの考え方や習慣が古臭いものだと思い込み、自信を失いつつあるようだ。だが、早藤氏や大谷選手の行為でもわかるように、日本人の日常的な考え方や習慣には国際的に見ても高く評価されるべきものが数多くある。

 米国の政治哲学者、マイケル・サンデル氏の新著『実力も運のうち--能力主義は正義か』(早川書房)を読んでいてもそう感じた。この本は、米国に蔓延(まんえん)する能力主義(業績主義)の負の側面に警鐘をならすものだ。米国は、人々の出自や性別、人種などに左右されず、能力ある者が成功する社会を作ろうとしてきた。能力主義の理想は米国社会に浸透したが、その一方で、現在ではその弊害も目立ってきた。

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