朝晴れエッセー

オレオレ・4月19日

「オレオレ」

詐欺ではありません。最近息子が意識して連発している一人称である。学校では一人称を略して会話をしていたようだが、家庭ではもっぱら、幼い頃からの呼び名で自身を呼んでいた。

しかし、20歳を過ぎて自身のことを愛称で呼ぶのはさすがにマズイと思い始めたらしく、事あるごとに必要以上に「オレオレ」と連呼する。

抵抗があるのは一目で分かる。照れを隠して無理をしている様子がおかしくて私もつい、意地悪を言ってしまう。

「オレって誰?」

まだ練習中なのは「オレ」だけなので、職場では「自分は」という言い方をしているらしい。次は「僕は」の練習を始めなければならないだろう。

大人になってこんなくだらない苦労をさせるのだったら、小さい頃から呼び名を改めさせておけばよかったのだが、名前で呼んでいる方がかわいかったのでそのままにしてしまったのがいけなかった。

姉の方はいつの間にか何気なく「私」と言えるようになっていたが、妹はいまだに名前のままの一人称を使っている。いつか「私」という呼び名の練習を始めたときには、意地悪な母親に「私って誰?」と聞かれることだろう。

そして今もまた「オレの弁当は?」と無理して発音している息子に聞くのである。

「オレって誰?」

村尾明子(51) 大阪府八尾市