日曜に書く

論説委員・長戸雅子 HOGOSHIのハードル

「世界保護司会議」で、オンラインを組み合わせて行われたパネルディスカッション=3月7日午後、京都市
「世界保護司会議」で、オンラインを組み合わせて行われたパネルディスカッション=3月7日午後、京都市

不思議な訪問者

「センセイッ! よろしくお願いいたします」

スーツをきっちり身に着けた角刈りの大柄な中年男性がある日家にやってきた。正座をし家中に響く大きな声でこうあいさつすると父に頭を下げた。

教師でもない父をなぜ、先生と呼ぶのだろうか。父自身も何とも面はゆげな表情だった。かしこまった所作が少し芝居じみていて、どんな知り合いなのだろうと興味を覚えたが、すぐ外に遊びに出るようにいわれた。

その後、男性は何度かやってきたが、開口一番の「センセイッ」は変わらなかった。名前もなぜ家にやってくるのかも教えてもらえなかったので、私はその男性を「センセイのおじさん」と呼んでいた。

当時高校生だった私の兄は、こっそり入ったパチンコ店で「センセイのおじさん」と遭遇し、例の大声で「これはこれは先生の坊ちゃんでは」と話しかけられた。直後に少し小さな声で「先生には内緒にしておきますからね」と言われたそうだ。

「センセイのおじさん」が傷害事件を起こして服役し、保護観察の身であったこと、父が保護司として面会していたことを知ったのは十数年も後のことだった。

民間に「依存」

こんな経験があったので、京都で3月に開催された「国連犯罪防止刑事司法会議」(京都コングレス)の関連イベントとして「世界保護司会議」が行われ、「世界保護司デー」の制定を目指す「京都保護司宣言」が採択されたとのニュースには大いに関心を持った。

民間のボランティアが矯正の一端を担う保護司制度は世界でもあまり例がなく、政府は「KOBAN(交番)」のように保護司を「HOGOSHI」として海外に広めたいと宣言した。ゴーン事件でネガティブなイメージが強まった日本の刑事司法にとって良い機会かもしれない、と考えていたところへ横浜市の読者から、こんな手紙をいただいた。