朝晴れエッセー

お父さんとスーパールーキー・4月17日

父は大の阪神ファンだった。

昔から、テレビの前で大声で阪神の応援をしていた。一緒に見ているうちに、私も自然と阪神ファンになった。

父と一緒に甲子園にも何度も行った。岡田彰布(あきのぶ)監督時代の優勝決定戦を生観戦できたことは、一生の思い出だ。

そんな父が認知症になった。

父の場合は物忘れとイライラが顕著であった。今思うと、父はいろいろなことを忘れ、間違い、それを指摘されるつらさや不安感からイライラしていたのではないかと思う。

しかし、当時の私は父と衝突ばかりしていた。「親に向かって、その言い方は何や!」と父が怒鳴り、「そっちこそ、老いては子に従えや!」と、私が言い返す日々であった。

父は阪神の試合を見なくなった。「野球なんてバカバカしくて、面白くない」と。甲子園に行っても「胸が苦しい」と、試合途中で帰りたがるようになった。

やがて、父は施設に入った。

施設生活が合っていたのだろう。イライラしなくなった。そして、再び阪神の試合中継を見るようになった。先日は「佐藤(輝明)はすごい新人やなあ」「佐藤がおるから、阪神は優勝するかもしれへんで」と言っていた。

昨日の食事内容も覚えていない父が、佐藤選手の名前は「記憶する」ことができたのだ。すごい。これも、スーパールーキー佐藤選手の力であろうか。

今、父は「コロナが収まったら、今年は1回くらい甲子園に行こうや」と、ニコニコしながら言っている。

小林恵子 42 大阪府豊中市