鑑賞眼

歌舞伎座「四月大歌舞伎」 36年ぶり奇跡の「桜姫」

そして「桜谷草庵」で桜姫は、かつて自分を襲って妊娠までさせた無頼漢、釣鐘権助(仁左衛門の2役)と再会。恥じらいつつも花が開くように大胆になり、権助に身を委ねる。長年、組んできた仁左衛門と玉三郎だけあって、互いを最も美しく見せる体勢での交歓。桜姫のいちずさ、悪党の権助の色気が一つになって、ドキドキさせられっぱなし。華やかな場面が続いた後の「三囲」では、すっかり落ちぶれた清玄と、幼子を抱き徘徊(はいかい)する桜姫が、隅田川土手で行き交う運命的なすれ違いの詩情に酔った。

長らく埋もれていた今作の補綴(ほてい)を担い、戦後、「桜姫」を本格的に蘇らせた亡き郡司正勝は作品について、「高貴であるがゆえの自由奔放さといたずらの性をもつといった人間性を見透かした南北の眼光はするどい」と記した。埋もれつつあった南北作品が、この2人の俳優の出演によって息を吹き返し、磨き上げられた奇跡を、目の当たりにできる舞台といえよう。

第1部(開演午前11時)は小鍛冶(こかじ)、勧進帳。第2部(同午後2時45分)は絵本太功記(えほんたいこうき)、団子売。28日まで(19日休演)。チケットホン松竹0570・000・489。(飯塚友子)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。