鑑賞眼

パルコ・プロデュース「モダン・ボーイズ」 舞台は不要不急じゃない

昭和初期、華やかな浅草のレビュー小屋で物語は進む(加藤幸広撮影)
昭和初期、華やかな浅草のレビュー小屋で物語は進む(加藤幸広撮影)

 「コロナ禍の今だからこそ、今作を上演したい」という思いが伝わった。

 昭和初期、華やかな浅草のレビュー小屋。座付き作家の菊谷栄(山崎樹範)は、共産主義者として追われる同郷の後輩、矢萩奏(加藤シゲアキ)を警察から匿う。矢萩は音楽の才能を開花させ、浅草エフリィとして人気者になり、大衆を救う道はここにあったと気付く。不景気と戦争が迫る時代、彼らは不要不急と糾弾されるが、劇場を開け続ける-。

 横内謙介作、一色隆司演出。27年前に木村拓哉主演で上演された「洒落男たち~モダンボーイズ~」を大幅に書き直した。木村から主演を引き継いだ加藤は3年半ぶりの舞台出演。登場人物たちが聞きほれるソロの歌唱シーンもある。

 劇中、舞台に心血を注ぐ矢萩らに対し、「こんな時期に遊んでいる場合か」、「舞台というのは下らないものだ」といった趣旨の批判が共産主義者や公権力側から何度もぶつけられる。菊谷はそれらの意見を受け止め、客席の様子を示して「(自分たちの舞台は)この世にまったく不要なものだと思われてるけど、大勢の人が楽しみにしてくれている」として、だからこそ劇場を開き続けなければならない、と説く。

 弁証法的な展開で主題が分かりやすい反面、説教臭さも感じたが、随所にちりばめられた芸人のエゾケン(坂口涼太郎)やデッパ(きづき)、踊り子の鎌倉乙女(伴美奈子)らによる吉本新喜劇を彷彿(ほうふつ)とさせるコテコテのドタバタ劇で中和されている。何かと矢萩や菊谷に突っかかる楽士、和田純(神保悟志)の屈折っぷりもリアリティーがある。

 物語はずっと楽屋裏で進む。昭和レトロな郷愁を誘う美術(松井るみ)も楽しく、終盤の夢うつつの合間に楽屋裏から外に開いていく空間も、レビューの世界を描いた作品にふさわしく、幻想的な優しさがあった。

 16日までは東京都渋谷区の新国立劇場中劇場。問い合わせはサンライズプロモーション東京、0570・00・3337。28日~30日は大阪市中央区、COOL JAPAN OSAKA WW ホール。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。