ポトマック通信

米首都の田舎者

 小学校から中学校にかけての数年を、親の仕事の都合で米中西部オハイオ州にある人口8千人ほどの田舎町で過ごした。修学旅行先は首都ワシントンだった。

 定番の観光コースのほか、目玉の一つにミュージカル観劇があった。引率の先生が「恥ずかしくない格好をしましょう」というので、出発前に父親とネクタイの締め方を猛特訓。同級生や先生方も、粗相がないようにと緊張していた。

 当日、劇場で驚いた。観客の多くはジーンズなどのカジュアルな服装で、ビールを飲んだりしながらくつろいでいたのだ。それがとても格好よく見え、めかしこんだ自分たちはひどく場違いに感じられた。

 そんなこともあって、田舎者の私にとって、米政治の中心地でエリートが集まるワシントンは距離的にも心理的にも遠く、洗練されていて、ある種のコンプレックスを抱く場所として印象に残っている。

 広大な国土の大部分を占める田舎に暮らす米国人の多くにとっても同様ではなかろうか。「ワシントン政治をぶっ壊す」というトランプ前大統領の主張に今も訴求力があることとも無縁ではないように思える。

 そのワシントンに今月、着任した。ダイナミックな政治や外交には興味津々だが、田舎者の視点も忘れずにいようと思う。(大内清)