コロナ その時、

(24)重症者が急増 「GoTo」風当り強まる 2020年11月1日~

11月に入り、新型コロナウイルスはまたも猛威を振るい始めた。感染者が各地で過去最多を更新。目立ったのが重症患者で30日は493人と月初めの164人から3倍となり、医療態勢に不安が高まった。

感染拡大の「第3波」が鮮明となり、政府の経済回復策にも風当たりが増した。

新型コロナウイルスの感染再拡大は11月に入ると誰の目にも明らかになってきた。日本医師会の中川俊男会長は11日の記者会見で、「第3波と考えていいのではないか」との認識を示した。

重症患者が増加、逼迫する病床

懸念はその波の大きさで、12日の全国の新規感染者数は1623人と、第2波のピーク時の1595人(8月7日)を超えた。重症患者の増加も第3波の特徴で、16日に272人と、こちらも第2波のピークの259人(8月23日)を上回り、このままだと「通常の医療との両立が極めて困難になる」との見方が強まった。

利用可能な新型コロナ病床の7割超が埋まった北海道は17日、札幌市を対象に不要不急の外出自粛を要請。同日、京都、茨城、大分など6府県で新規感染者が過去最多を更新した。

東京都は19日、初めて500人を超す531人の感染を確認し、感染状況に関する警戒度を最高レベルの「感染が拡大している」に引き上げるとともに、28日から酒類を提供する飲食店などへの営業時間の短縮を要請。大阪府も22日、感染者が485人と過去最高を更新した。

政府の新型コロナ感染症対策分科会は12日、11月末までとしていた大規模イベントの開催制限を翌年2月末まで継続することを了承した。

GoToトラベル 札幌・大阪市を除外

観光支援事業「Go To トラベル」への風当たりも強まったが、政府の対応はちぐはぐな印象を与えた。菅義偉首相は20日の参院本会議で、「4000万人が利用して、判明した感染者は176人だ」と強調し、感染拡大との因果関係を否定。ところが、直後に分科会から事業の運用見直しを求められ、翌21日に感染が拡大した地域での一時停止といった見直しを表明した。そして政府は24日、感染者の増加が顕著な札幌市と大阪市を事業の対象から除外すると決定した。

分科会は9日、クラスター(感染者集団)対策の強化を政府に求める緊急提言を行った。尾身茂会長は「感染症は、あるレベルを超えると急に行く(拡大する)」と危機感を示したが、この警告は不幸にも12月以降に的中する。

威信かけワクチン開発

米国大統領選が3日、開票を迎えた。選挙戦を通じてトランプ大統領は感染の押さえ込みやワクチン開発に成功しているという楽観論を振りまいたのに対し、バイデン前副大統領は政権の対応を批判し、7日に当選を確実にした。それでも、苦戦が予想されたトランプ氏が接戦を展開したのは、行動制限より経済を動かすことを重視する姿勢に支持が集まったとみられる。同氏は選挙の不正などを訴え、敗北を認めようとしなかった。

この時期、中国やロシアなどの権威主義体制は、ワクチン供給を通じて世界で影響力を強める「ワクチン外交」の展開を始めた。一方、米製薬大手ファイザーなどは9日、開発中のワクチンに90%超の予防効果があると発表。ワクチン開発は「体制間競争」の様相を呈してきた。

映画「鬼滅の刃」記録的ヒット

第3波の直撃を受けても、東京五輪・パラリンピックに向けた準備は進んでいた。来日した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は16日、約2年ぶりに東京都庁を訪れ、小池百合子知事と会談。「まだ大会まで9カ月あり、さらに科学的知見も得られる」と述べ、五輪開催の方針を改めて強調した。

コロナ禍でもヒットや社会現象が生まれた。ソニーのゲーム子会社は12日、据え置き型家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」を発売。感染対策として店頭での商品購入は予約抽選の当選者に限ったが、品薄で定価の2倍以上での転売も横行した。東宝が配給するアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」も記録的ヒットを飛ばした。映画館側も感染対策をアピールし、29日までに興行収入は約275億円に達して、公開から45日間で歴代2位となった。

だが、第3波の勢いはいやが上にも増していき、一方でウイルス自体も変化し社会を一段と脅かすことになる。

(23)2020年10月1日~ 忍び寄る第3波の影

(25)2020年12月1日~ 勝負の3週間敗北 GoTo停止

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