韓国大統領、処理水放出で国際裁判所への提訴「積極検討」

韓国大統領府の会議で発言する文在寅大統領=5日、ソウル(聯合=共同)
韓国大統領府の会議で発言する文在寅大統領=5日、ソウル(聯合=共同)

 【ソウル=時吉達也】日本政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を正式に決めたことに関し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、決定の撤回を求め、国際海洋法裁判所(ドイツ・ハンブルク)に提訴することを「積極的に検討」するよう担当部署に指示した。大統領府が発表した。

 文氏はまた、同日、大統領府での信任状捧呈式に臨んだ相星孝一駐韓大使に対し「地理的に最も近く、海を共有する韓国の憂慮は非常に大きい」と述べ、日本政府に伝達するよう求めた。捧呈式後の歓談の席でこうした政治的発言に踏み込むのは極めて異例だ。

 中韓両国の外務省は同日、海洋協力に関する会議をテレビ電話方式で開いた。韓国側によると、両国は、日本の決定が「隣国との十分な協議なく行われたことに、強い遺憾と深刻な憂慮を共有した」という。

 13日の日本政府の決定に対し、韓国メディアは「近隣国の不安に配慮しなかった」(朝鮮日報)「東京五輪にも否定的な影響を与えると認識すべきだ」(京郷新聞)などと一斉に反発していた。

 文氏は菅義偉政権発足以降、対日関係改善を模索。今年1月の年頭記者会見では、両国間の懸案となっているいわゆる徴用工訴訟に関し、日本企業の資産売却は「望ましくない」と述べ、注目を集めた。今回の問題では対日強硬論の高まりを受け、軌道修正を余儀なくされた格好だ。

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